【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
むしろ、こんな店をクリスが知っていることにフローラは驚いたようだ。
「クリス様は、いろんなお店を知っているのですね」
感心したようにフローラが言った。ちょうどスープを飲み終えたところだった。
「そうですね」
クリスは返事をしたが、それもこれも全てはあのノルトが食事をするならここがいい、としきりに言ってきたからだ。だからこの店もノルト推薦による店である。
むしろ、この店で食事をしなかったら、休み明けに「あの店どうだった? はあ? 行ってないだと? お前は一体何を考えているんだ?」というノルトのわけのわからない言葉が槍のように降ってくることが容易に想像できたからだ。
そもそもクリスだって、女性とこのように頻繁にでかけるような男ではない。むしろ、あの師匠の店で魔導書を探して読みふけっているような男なのだ。それにも関わらず、国王陛下直々ではないが、ぐるりと回り巡っての陛下からの命令であれば、一応彼だってそれに従おうという努力はする。
その努力をしようと思ったのも、相手がフローラだったから、かもしれない。
一目見た時、彼女の美しさに心が跳ねた。派手な美しさではない。落ち着いた美しさ。クリスだからこそ、そう見えたのかもしれない。そして彼女自身はそれを自覚していない。
宰相の計らいによって、いや、罠によって二人きりにされたとき、彼女は自分を気遣ってくれたのか、先に名乗ってくれた。その声も、クリスにとっては心地よい可愛らしい声に聞こえた。
「クリス様は、いろんなお店を知っているのですね」
感心したようにフローラが言った。ちょうどスープを飲み終えたところだった。
「そうですね」
クリスは返事をしたが、それもこれも全てはあのノルトが食事をするならここがいい、としきりに言ってきたからだ。だからこの店もノルト推薦による店である。
むしろ、この店で食事をしなかったら、休み明けに「あの店どうだった? はあ? 行ってないだと? お前は一体何を考えているんだ?」というノルトのわけのわからない言葉が槍のように降ってくることが容易に想像できたからだ。
そもそもクリスだって、女性とこのように頻繁にでかけるような男ではない。むしろ、あの師匠の店で魔導書を探して読みふけっているような男なのだ。それにも関わらず、国王陛下直々ではないが、ぐるりと回り巡っての陛下からの命令であれば、一応彼だってそれに従おうという努力はする。
その努力をしようと思ったのも、相手がフローラだったから、かもしれない。
一目見た時、彼女の美しさに心が跳ねた。派手な美しさではない。落ち着いた美しさ。クリスだからこそ、そう見えたのかもしれない。そして彼女自身はそれを自覚していない。
宰相の計らいによって、いや、罠によって二人きりにされたとき、彼女は自分を気遣ってくれたのか、先に名乗ってくれた。その声も、クリスにとっては心地よい可愛らしい声に聞こえた。