【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 クリスが名乗ると、クリスのことは知っていた、と言う。だが、残念なことにクリスは彼女のことを知らなかった。こんなことならもっと早く知っておくべきだった、とそのとき後悔した。
 話を弾ませるために、目に入ったお菓子で話題を振ってみた。彼女はそれに乗ってくれた。さらに、菓子作りが好きだということまで教えてくれた。不思議なことに彼女と話をするのは嫌ではなかった。
 その後、国王と宰相から聞いた話で、なんとなく分かった。そう、自分と彼女は相性がいい、ということを。恐らく、初めて彼女と出会ったときに、その相性をクリスが感じとったのだろう。
 さらに、彼女なら自分の子を生んでくれるかもしれない、という希望が勝手に沸いていた。それくらいの希望を持つくらい、一瞬で彼女に惹かれた。
 クリスに結婚願望が無いわけではない。むしろ、ある。ものすごくあるわけではない、そう人並みにある。だけど、相手が見つからなかった。そう、見つからなかっただけ。だから、その相手が見つかったのであれば、彼女と結婚したいとさえも思う。
「あの、クリス様。どうかされましたか?」
 クリスが黙ってじっとフローラの顔を見ていたから、不思議に思ったのだろう。彼女はそう、声をかけてきた。
「いえ、どうもしません。あなたという人を観察していました」
「か、観察ですか」
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