【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。

「彼女の両親は魔導士なのか？」
　ノルトは尋ねた。彼女の魔力が封じられたとしたら、封じたのは恐らく両親のどちらか。
「父親は騎士だと言っておりましたね。母親は、彼女を生んですぐに亡くなられたとか」
「お前と同じだな」
　ノルトの言葉にクリスはピクリと眉尻を反応させた。そう、クリスも赤ん坊の頃に自分の母親を失っている。その原因も知っている。だからクリスも母親の顔を知らない。
　それでも、彼が物凄くひねくれずに育ったのは、父親が父親なりに愛情を注いでくれていたから、かもしれない。母さんはお前に会いたがっていたんだ、と。だから、お前をその命に代えて生んだんだ、と。
　それでも少しひねくれているのは、母親の愛情が恋しいからなのかもしれない。そんな父親は少し年を老いたため、田舎の領地へ引っ込んで、田舎でのんびりと暮らしている。そんな田舎の父親を案じているクリスは、魔獣除けの魔法を付与したいろんなものを、頻繁に送っているらしい。だから、彼の父親が治めている領地は、魔獣に襲われることなくのんびりとしているものだった。