【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 護衛騎士という立場は、その仕事のシフトも不規則になる。二十四時間、誰かが必ず対象者の護衛につく必要があるためだ。
 フローラの場合、一泊二日で護衛について一日休み、というシフトだった。それが一泊二日で護衛について二日休み、というシフトに急遽かわった。そのうちの一日を、このようにクリスからの魔法教育を受ける日となったのだ。それもこれもあのアダムとノルトの根回しの他に、国王陛下と宰相の計らいもあるのだろうな、とフローラは思っている。
 魔法の練習場所は、クリスが所有する屋敷。
 そう、このクリス。そこそこのご令嬢から結婚を迫られるほど、そこそこいい家柄のお坊ちゃんだった。だが、父親が田舎に引っ込んだ今は「旦那様」と呼ばれていた。
 その旦那様が、一人の女性を屋敷に招いたものだから、使用人一同はあたふたとし始めた。それはもう、いろんな意味で。だが、優秀な使用人はその動揺を旦那様と客人には見せないように、せっせと準備をしたらしい。
 今、クリスとフローラがいる場所は彼の屋敷の裏庭。建物が無い方には、ただの庭が広がっている。本来であれば花などが植えられていてもいいはずなのだが、昔からクリスがこの場所で魔法の練習をしていたため、何も無いただの芝生になってしまったらしい。
 天気も上々。時間もお昼の少し前。心も晴れる時間帯。
 そんな中、二人は向かい合って立っていた。
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