【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。

「では、食後にいただきましょう」
　そこで、クリスは侍女の一人に声をかける。「彼女の着替えを」とだけ言う。
　クリスと別れたフローラはなぜか着替えをさせられていた。普段、フローラが着ることのないような、ドレスである。
「お似合いですよ」
　着替えを手伝ってくれた侍女は口にする。その侍女は手早くフローラの髪の毛も編み込んでくれた。
「旦那様もお喜びになられると思います」
　このような恰好をしたことのないフローラはどう反応したらいいかわからなかった。
「あ、あの。ありがとうございます」
　侍女に案内されクリスの元へと向かったフローラであるが、クリスも下から上まで全身を愛でてから、すっと手を差し出した。すぐそこの場所ではあるのに、クリスはフローラとくっついていたいらしい。
　クリスと共にとる昼食。初めのうちはとても緊張して、食事の味などがわからなかった。食べ物が喉につかえそうなくらい。だけどクリスをはじめ、使用人たちがなぜかフローラに優しく、なんとか食事の味というものがわかるようになってきた。
「フローラの所作は美しいですね」
　クリスにそんなことを言われてしまったら、またフローラは動揺してしまう。動かしていたナイフの動きをきゅっと、止めてしまう。