【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「フローラ?」
「あ。はい。あの、父から厳しく言われておりましたので」
「そうなんですね。フローラ、緊張、されていますか?」
「あ。はい。このようにクリス様のお屋敷で一緒に食事をいただいていますので、とても緊張しております」
 フローラから出てくる言葉に、執事も侍女も、笑みを浮かべながら見守っていた。
「わかりました。恐らく彼らがいるから緊張しているのでしょう」
 クリスはその執事たちに一瞥くれる。
「え、と。あ、あの……。違います。私が勝手に緊張しているだけです。その、クリス様と一緒にいられるから、その……」
 言い訳すればするほどドツボにハマりそうであるため、フローラは口を閉ざした。
「旦那様。奥様になられるかもしれない方を、あまりいじめないようにお願いします」
 執事がそう口にすると、他の使用人たちも一斉に頷く。
「私はいじめてなどいない。お前たちが邪魔なんだ。食事が終わったら、二人きりにしろ」
 とクリスが声を荒げるものだから、フローラは余計に緊張してしまい、食事の味がわからなくなってしまった。
 食事を終えると、談話室へと案内された。これがクリスの言う二人きりにしろ、の流れ。
 無言のまま侍女がてきぱきとお茶とお菓子を準備すると、無言のままそこを立ち去る。ようやくクリスが望む二人きりになれたわけで。
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