【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 第一王女のジェシカの後方にいる女性騎士と男性騎士。その二人が何やら言い争いをしているようにも見える。
「フローラ、待ってくれ。俺の話を聞いて欲しい」
「だから、今は職務中だ。ジェシカ様にもご迷惑がかかる。後にしろ」
 ふん、とフローラが腕を振り払おうとするが、相手の男も騎士。そのくらいでは掴んでいた手を放してはくれないらしい。
「だったら。仕事が終わったら会うという約束をしてくれ。そうしたらこの手を放す」
「わかった。だからその手を放せ」
 フローラが言うと、相手の男は渋々と彼女から離れた。
「ジェシカ様。お騒がせして申し訳ございません」
 膝を折って、ジェシカに謝罪しているその女性騎士は間違いなくフローラだった。クリスが見間違えるわけはない。
 いつもクリスと会うフローラは、もう少し意思の弱い女性に見えていた。だが、あそこにいるフローラは「誰だ」と疑ってしまうほど、いつもの彼女とは違う女性に見える。だけど、それでもフローラはフローラだった。クリスの心が彼女であるとそう訴えている。
 普段の彼女の顔と、職場で見せる彼女の顔の違いに、クリスの背中にはぞわぞわとした興奮が駆け巡った。どちらの彼女も暴いてみたいというその欲望が全身を震わせたのだ。
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