【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 さらに、彼女の中からはクリスの魔力が感じられるようになった。これでは、力ある者だったら、彼女が交わった相手がクリスであることに気付くだろう。これを彼女に言うか言わぬか、ということに彼は悩んでいた。
「一緒にお風呂に入りましょうか?」
 しばらく二人で抱き合ったあと、クリスがそう提案した。
「一緒に……」
 恥ずかしそうに口にするフローラであるが、嫌がっている様子はない。
 クリスがフローラを背後から抱きかかえる形で、ゆっくりと湯船につかる。
「あの、クリス様は」
 お湯の中で両手を合わせてフローラは声をかけてみた。
「その……、子供は望まれますか?」
 クリスは自分の額をフローラの頭にこつんと当てた。答えるのが照れくさいというか恥ずかしいというか、まだ早いというか。
「できれば」
 という一言だけにしておく。
「ですが。恐らくですが、私の魔力の関係でなかなか孕むことはないと思いますので、そこは安心してください」
 両手で彼女の下腹部を包むと、さらにその上にフローラが手を重ねた。
「あの……、そういう意味ではなくて、ですね」
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