聖なる祈り

羽を拾う


 青いペンキで塗りたくったような空に、ふわふわと白い何かが落ちてきた。

 彼女と並んで歩き、コンビニから自宅に帰る午後の事だった。

 目深に被った帽子のつばからスッと視界を横切り、それはあたかも隣りに立つ彼女、 星伽(せいか)に吸い寄せられるように舞い落ちた。

「羽?」

 ピンク色のスニーカーに落ちたそれを白い指先でつまみ上げ、星伽(せいか)はキョトンと目を瞬いた。

「鳥の羽かな?」

 黙ったままで凝視する彼女に再び声を掛けると、彼女は目尻を垂れて幸せそうに笑った。彼女の紅く潤った唇が柔らかく持ち上がり、弧を描く。

「天使の羽だよ。きっと……」

 彼女の笑みにつられて、僕も目を細めた。

「そうだね」

 僕は彼女のこの、夢見がちで無邪気なところがとても好きだった。

「天使の羽はね、叶多(かなた)。幸せの証なんだよ?」

 そう言って星伽は拾った羽をハンカチに包み、鞄に仕舞っていた。
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