先輩が愛してくれた本当のわたし
最悪の初めて
◇
放課後の教室の片隅で先生に見つからないようにこっそりと化粧をしながら、森下リカは同級生数人とこの後どこへ行こうかと談笑をしていた。
カラオケにでも行こうか、プラプラとショップをうろつこうか、フラペチーノ片手にだべろうか。
来年は受験生、塾に通う子もたくさんいる。
だがリカは勉強なんかよりも友人同士騒いでいる方が楽しい。遊ぶお金のためにバイトくらいはするけれど。
友人の一人がスマホを片手にドヤる。
「彼氏が迎えに来るっていってる」
「えー! いいなぁ。綾ちゃんは大学生の彼氏がいるんだっけ?」
「まあねぇ。そういう香奈ちゃんも社会人の彼氏いるんでしょ」
「えっ? いつの間に? しかも社会人? どこで出会うのよ~」
キャイキャイと恋話に火が付きその話題はいつの間にかディープな話題、――初体験の話へ進展していった。
リカは同級生と付き合ったことはあるけれど、わずか数か月で別れてしまった。当然初体験もまだなわけで。
それについては別に何とも思っていなかったし、高校生なんてそんなものだろうなんて思っていたのだが。
「みんなは何歳で処女捨てたい?」
綾音が声を潜めて言う。
綾音も香奈も、年上の彼氏と付き合うことで処女を捨てた。
『捨てる』という表現に嫌悪感はあった。
あったけれど、綾音も香奈も、他の友達も、その事について指摘する者はいない。
「私はやっぱり、高校卒業までに?」
「わかるー」
「リカちゃんは?」
「え、私は別に……」
「えー! それはやばいって。誰か紹介してあげるから」
そんな言葉に騙されるなんてそのころのリカには微塵も思わなかった。
むしろ処女を捨てた私は同級生よりもステータスが上、くらいの気持ちでいた。
いつかそれがとんでもなく浅はかで後悔となることも知らずに。
「うーん、じゃあ、私も高校卒業までにかなぁ」
同調圧力だったのかもしれない。
まだ周りでそんな行為に及んだ者は少ない。けれど友人が言うのならもしかしたら高校生で処女を捨てるのが一般的なのかも、という気持ちになってくるのだ。
真実はどうあれ、今自分のまわりにいる者たちの言葉が、世界の中心だった。
放課後の教室の片隅で先生に見つからないようにこっそりと化粧をしながら、森下リカは同級生数人とこの後どこへ行こうかと談笑をしていた。
カラオケにでも行こうか、プラプラとショップをうろつこうか、フラペチーノ片手にだべろうか。
来年は受験生、塾に通う子もたくさんいる。
だがリカは勉強なんかよりも友人同士騒いでいる方が楽しい。遊ぶお金のためにバイトくらいはするけれど。
友人の一人がスマホを片手にドヤる。
「彼氏が迎えに来るっていってる」
「えー! いいなぁ。綾ちゃんは大学生の彼氏がいるんだっけ?」
「まあねぇ。そういう香奈ちゃんも社会人の彼氏いるんでしょ」
「えっ? いつの間に? しかも社会人? どこで出会うのよ~」
キャイキャイと恋話に火が付きその話題はいつの間にかディープな話題、――初体験の話へ進展していった。
リカは同級生と付き合ったことはあるけれど、わずか数か月で別れてしまった。当然初体験もまだなわけで。
それについては別に何とも思っていなかったし、高校生なんてそんなものだろうなんて思っていたのだが。
「みんなは何歳で処女捨てたい?」
綾音が声を潜めて言う。
綾音も香奈も、年上の彼氏と付き合うことで処女を捨てた。
『捨てる』という表現に嫌悪感はあった。
あったけれど、綾音も香奈も、他の友達も、その事について指摘する者はいない。
「私はやっぱり、高校卒業までに?」
「わかるー」
「リカちゃんは?」
「え、私は別に……」
「えー! それはやばいって。誰か紹介してあげるから」
そんな言葉に騙されるなんてそのころのリカには微塵も思わなかった。
むしろ処女を捨てた私は同級生よりもステータスが上、くらいの気持ちでいた。
いつかそれがとんでもなく浅はかで後悔となることも知らずに。
「うーん、じゃあ、私も高校卒業までにかなぁ」
同調圧力だったのかもしれない。
まだ周りでそんな行為に及んだ者は少ない。けれど友人が言うのならもしかしたら高校生で処女を捨てるのが一般的なのかも、という気持ちになってくるのだ。
真実はどうあれ、今自分のまわりにいる者たちの言葉が、世界の中心だった。
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