先輩が愛してくれた本当のわたし
と、男性が「ん? お前……」とリカの顔をまじまじと見る。
そして首から提げていた社員証をチラリと見ると、いやらしくニヤリと笑った。
「森下リカじゃん」
その瞬間、微かに煙草の臭いが鼻を掠め、その嗅いだことのある香りは一気にリカの記憶を呼び起こした。
苦しくて胸が詰まり顔が青ざめる。
「なあに? 知り合いー?」
「そうそう、こいつ高校生のときさ――」
「ていうかそんな昔のことよく覚えてるね」
「ヤッた女の顔と名前は忘れねぇ。それが礼儀ってもんだろ?」
「ウケる」
聞こえるか聞こえないかくらいの声で話す男女は完全にリカを蔑んだ目で見る。
男性はリカの初めてを捧げてしまった淳志だ。
あの時から七年ほど経っているが、面影は変わらない。
まさかこんなところで再会してしまうなんて――。
ショックで固まったリカを、淳志は上から下まで舐めるように見る。
「また俺が遊んでやろうか?」
「っ!」
「ちょっと淳志ったら、冗談キツイ~。きゃはは」
ふざけるなとムカムカした気持ちは喉元まできていたけれど、声になることはなかった。
リカが何も言えずにいることに気分を良くしたのか、淳志はさらにヒートアップさせる。
「でさあ、俺とお前の仲じゃん。退会するのやめるから、タダにしてくれねえ?」
「……それは……できません」
「はあ? 使えねえ女だな。お前のこと、店長に話してもいいんだぜ? 尻軽女だってなあ?」
「や、やめてください」
自分の過去を蒸し返さないでほしい。
忘れたいのに、忘れるようにしていたのに、淳志によって次々と暴かれていく様な気さえしてリカは気が遠くなった。
そして首から提げていた社員証をチラリと見ると、いやらしくニヤリと笑った。
「森下リカじゃん」
その瞬間、微かに煙草の臭いが鼻を掠め、その嗅いだことのある香りは一気にリカの記憶を呼び起こした。
苦しくて胸が詰まり顔が青ざめる。
「なあに? 知り合いー?」
「そうそう、こいつ高校生のときさ――」
「ていうかそんな昔のことよく覚えてるね」
「ヤッた女の顔と名前は忘れねぇ。それが礼儀ってもんだろ?」
「ウケる」
聞こえるか聞こえないかくらいの声で話す男女は完全にリカを蔑んだ目で見る。
男性はリカの初めてを捧げてしまった淳志だ。
あの時から七年ほど経っているが、面影は変わらない。
まさかこんなところで再会してしまうなんて――。
ショックで固まったリカを、淳志は上から下まで舐めるように見る。
「また俺が遊んでやろうか?」
「っ!」
「ちょっと淳志ったら、冗談キツイ~。きゃはは」
ふざけるなとムカムカした気持ちは喉元まできていたけれど、声になることはなかった。
リカが何も言えずにいることに気分を良くしたのか、淳志はさらにヒートアップさせる。
「でさあ、俺とお前の仲じゃん。退会するのやめるから、タダにしてくれねえ?」
「……それは……できません」
「はあ? 使えねえ女だな。お前のこと、店長に話してもいいんだぜ? 尻軽女だってなあ?」
「や、やめてください」
自分の過去を蒸し返さないでほしい。
忘れたいのに、忘れるようにしていたのに、淳志によって次々と暴かれていく様な気さえしてリカは気が遠くなった。