先輩が愛してくれた本当のわたし
窓から差し込む日差しが眩しく、リカは顔をしかめながら布団に顔を埋めた。
深酒したためだろうか、妙に体が気だるい。

「今何時?」

「九時だけど?」

ひとり言のつもりだったのに返事が帰ってきてリカはパチッと目を開けた。
そういえば自分の布団と感触が違う。
ぐるりと部屋を見まわし、ハッとなって体を起こした。

「おはようリカちゃん」

「お、はようございます?」

「コーヒー飲む?」

なぜここに航太がいるのだろう。
なぜ自分はベッドで寝ているのだろう。
いろいろと頭が混乱している。

「もしかして寝ぼけてる? それとも昨日の記憶ない?」

「いや、あの、あります。寝ぼけてました。だんだん思い出してきた」

航太とヤケ酒をして自分の過去を打ち明け、そして航太に迫った。
うん、覚えている。
と頷いて「あああ」と頭を抱えた。

酔っていたとはいえ何という醜態だろうか。
酒に飲まれたことなど今までなかったのに。
そしてまたハッと気づいて自分の衣服の乱れを確認する。

と航太がぷはっと笑う。

「安心して。何もしてないよ」

「ほんとに?」

「嘘ついてどうすんだよ。それとも何かあった方がよかった?」

「いや、そういうわけじゃないけど」

でも航太に迫った記憶がある。
押し倒したような気もする。
それから記憶がないけれど。

「あああ」と再びリカは頭を抱えた。

ギシッとベッドが揺らいだ。
顔を上げればすぐ横に航太が座っている。

「リカちゃんが望めばいくらでもするよ。でもさ、俺はそこに至るまでの過程を大事にしたいんだよね」

「……過程?」
< 28 / 69 >

この作品をシェア

pagetop