先輩が愛してくれた本当のわたし
綾音の彼氏が連れてきた友人は、背が高くて茶髪にピアス、大人な笑みを称えながら煙草を吹かしていた。

「こちら、淳志さん。イケメンでしょ?」

「あ、うん……」

「はじめまして。淳志です。リカちゃん、聞いてたよりも可愛いね」

「えっ、あ、ありがとう……ございます」

「じゃあ、あとは二人でごゆっくりー」

「え、ちょっと、綾ちゃ……」

「んじゃあ、行こっか」

綾音が笑顔で手を振るなか、リカは淳志に肩を抱き寄せられてズルズルと連れて行かれてしまう。

急に密着した淳志からは煙草の臭いとそれをごまかすようなフレッシュな香水の香りが漂い、それが妙に大人っぽく感じてドキリと胸が揺れた。

淳志の車に乗せられてホテル街へ入る。

「リカちゃんは初めてなんだって?」

「あ、はい」

「俺が手ほどきしてあげるから安心して」

「……はい」

運転しながらも煙草を吸う淳志はとても大人っぽく見えたけれど、ただそれだけで。
これから淳志とエッチをするんだと思うと不安でいっぱいになった。

さっき初めて会った彼に信頼など置けるはずもない。
それなのにエッチをする。
処女を捨てるためだけに。

リカは腹をくくった。
今さら嫌だと言って帰れるわけがないし、例え逃げたとしても紹介してくれた綾音に悪いと思ったからだ。

「緊張してんの? 可愛いとこあるじゃん」

ホテルに入るなり、淳志はリカをベッドへ押し倒した。
何の前触れもなくキスをされる。

キスは初めてじゃない。
だけど初めてのキスとは違って、胸のときめきやドキドキ感はどういうわけか何も感じられなかった。
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