先輩が愛してくれた本当のわたし
ベージュのプリーツスカートに白のフーディを合わせ靴はスニーカー。
大人っぽさと可愛さを兼ね備えたコーディネートはそのまま仕事に行くにも割と楽な服装だ。

今日は早番で子供スイミングスクールの担当もない。
ジムでの仕事も汗をかくような仕事ではなく、その他事務所での仕事でも比較的静かに仕事をすることが多かったため、ロッカールームで少しばかりの化粧直しをするだけで済んだ。

ロッカールームを出たところで背後から突然『ガタガタッガッシャーン!』という派手な音が聞こえ、リカは驚いて振り向く。

見れば航太が、業者から納品されたスポーツ用品を盛大にぶちまけてすっ転んでいるではないか。

「えっ? 小野先輩? 大丈夫ですか?」

リカが慌てて駆け寄ると、航太は「うわー!」と昇天しそうな悲鳴を上げる。

「やだ何? 先輩しっかりして!」

リカがゆさゆさと航太を揺さぶると、航太はくうっと額を押さえて呟いた。

「なんだよそれ、可愛すぎだろ。反則だろ。」

「……は?」

「リカちゃん可愛すぎ」

「ちょ、何言ってるんですか。ケガとかしてないですか?」

「してない。リカちゃんが可愛すぎて驚きのあまりふらついただけだよ」

「……ちょっと何言ってるかわかんないんですけど」

リカは、はーっとため息をつきながら航太がぶちまけた品を拾い集める。

「……ごめん、動揺した」

と、航太も気を取り直して態勢を整える。
動揺とは何のことだろうとリカは首を傾げた。
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