先輩が愛してくれた本当のわたし
「いやー、リカがこんなにも恋愛に鈍感だったなんて思わなかったなー」
「うー、やめてよ。自分でもどうしたらいいかわかんないんだって」
「付き合っちゃえばいいじゃん」
「そんな簡単に……」
「告白されてるんだから簡単でしょう? 返事するだけじゃん」
奈月の言うことはもっともだ。
航太はリカのことが好きだと言っている。今日だって告白の返事を迫られたのだから、航太はリカからの返事を待っているのだ。
「……先輩、本気なんだよね?」
「何でそこで自信なくす? 先輩って遊び人なの?」
「いや、うーん、どうかな? なんかチャラい感じはあるんだけど、仕事は真面目だし優しくて尊敬できる先輩」
「……惚気に聞こえてきた」
「なんでよ……」
リカは意味がわからないとばかりに眉間にしわを寄せるが、それ以上に奈月の方が怪訝な表情を浮かべる。
「まあ、いいんじゃない? リカの初恋だもん。大いに悩みなさいって」
「初恋じゃないってば!」
「あはは! でもさ、いつまでも待っててくれると思っちゃだめよ。人の心は移ろいやすいって言うでしょ」
リカはぐうっと黙った。
奈月はもっともなことを言う。
リカとてそんな待ってもらおうという気はない。ただ、自分の心がついていかないだけで、だから今こうして必死についていこうともがいているのだ。
「ねえ、奈月はさ、本当によかったの? 街コンでいい人いたんじゃないの?」
「うーん、出会いはほしいし彼氏もほしいって思ってるけどね、やっぱり何かこうビビビってくるものほしいよね。ま、今日のところは私のビビビを持っていったのはリカの恋バナだったというだけよ」
奈月はカラカラと笑いながらビールをおかわりする。つられてリカもビールを飲み干す。
アルコールがまわってふわっといい気持ちになったが、今日はこの辺にしておこうと思った。先日の航太とのことを思い出して自分を戒めた。