先輩が愛してくれた本当のわたし
一生離さない
新年度が始まり、店舗はバタバタと忙しくなった。
この時季は新規入会する客も増え、その対応に追われがちになる。
リカと航太のシフトも意外とズレていたり会っても一言二言仕事の話をするに留まっており、まるで航太が告白したことなどなかったかのように日々が過ぎていった。
相変わらず弾けるような笑顔で子供たちに接する航太は、初めての子にも人見知りして下を向きがちな子にも上手く絡んで虜にしていく。
なぜ航太はあんなにも子供たちに笑顔を向けられるのだろう。その笑顔のほんの少しだけでいいから自分にも向けて欲しい、などと知らず知らずのうちにリカは嫉妬していた。
ふいにポンと肩を叩かれすれ違い様に囁かれる。
「リカちゃん、笑顔を忘れないで。仕事は楽しくな」
「……はい、すみません」
やはり航太を意識しているのは自分だけなのか、リカはそれをもどかしく感じる。
――フッてくれたら潔く諦めるから
思い出される航太の言葉。
航太のことをフッてなどいない。
けれど一向に返事をしないリカに対して見切りをつけたのだろうか。諦めたのだろうか。
それともやはり本気ではなかったのだろうか。
考えると胸がざわっと揺らぎ出す。
航太が他の女性社員へ笑いかけているのを目撃して、さらに不穏に心が揺れた。
――いつまでも待っててくれると思っちゃだめよ。人の心は移ろいやすいって言うでしょ
奈月に忠告された言葉が頭の中を反芻する。
不安な気持ちが倍増したようで落ちつかなくなった。
「もりしたせんせー、かんちゃんがおしっこでるってー」
「えっ? ちょっと待ってかんちゃん! トイレ、ほら、トイレ行こう!」
無理やり思考が現実に引き戻され、リカは我に返ったように慌てて対応する。
今はレッスン中、気を引き締めなければとリカは自分を戒めた。
この時季は新規入会する客も増え、その対応に追われがちになる。
リカと航太のシフトも意外とズレていたり会っても一言二言仕事の話をするに留まっており、まるで航太が告白したことなどなかったかのように日々が過ぎていった。
相変わらず弾けるような笑顔で子供たちに接する航太は、初めての子にも人見知りして下を向きがちな子にも上手く絡んで虜にしていく。
なぜ航太はあんなにも子供たちに笑顔を向けられるのだろう。その笑顔のほんの少しだけでいいから自分にも向けて欲しい、などと知らず知らずのうちにリカは嫉妬していた。
ふいにポンと肩を叩かれすれ違い様に囁かれる。
「リカちゃん、笑顔を忘れないで。仕事は楽しくな」
「……はい、すみません」
やはり航太を意識しているのは自分だけなのか、リカはそれをもどかしく感じる。
――フッてくれたら潔く諦めるから
思い出される航太の言葉。
航太のことをフッてなどいない。
けれど一向に返事をしないリカに対して見切りをつけたのだろうか。諦めたのだろうか。
それともやはり本気ではなかったのだろうか。
考えると胸がざわっと揺らぎ出す。
航太が他の女性社員へ笑いかけているのを目撃して、さらに不穏に心が揺れた。
――いつまでも待っててくれると思っちゃだめよ。人の心は移ろいやすいって言うでしょ
奈月に忠告された言葉が頭の中を反芻する。
不安な気持ちが倍増したようで落ちつかなくなった。
「もりしたせんせー、かんちゃんがおしっこでるってー」
「えっ? ちょっと待ってかんちゃん! トイレ、ほら、トイレ行こう!」
無理やり思考が現実に引き戻され、リカは我に返ったように慌てて対応する。
今はレッスン中、気を引き締めなければとリカは自分を戒めた。