先輩が愛してくれた本当のわたし


教育学部に通うかたわらスポーツジムでアルバイトをしていたリカは、教員免許は取ったけれど、教師になりたかったわけじゃない。
この先どうしようと思っていた時にバイト先のスポーツジムからスカウトされた。

バイト中はフロントでの受付や子供スイミングスクールの補助をしていたため子どもたちと触れ合うことも楽しかった。
けれどバイトと社員は仕事内容が違う。
先輩社員である小野航太がリカの教育担当となった。

「リカちゃん今日からよろしく」

「よろしくお願いします」

航太はリカより五歳年上で誰とでも分け隔てなく楽しそうにしゃべる明るいムードメーカーのような人物。
リカの社員化への話に航太も賛同してくれたという。
誰からも慕われているけどいじられキャラでもあり、ちょっと子供っぽいところもある。
子ども達には人気のある先生だ。

「小野せんせー。この人だれー?」

この人、とはリカのことだ。

「森下先生だよ。今日は森下先生も一緒にやるからね」

「やったー! 女の先生好きー!」

「なんだよそれ。小野先生のことは?」

「まあまあ好き」

「陸斗くん、今日はお顔付けしっかりするぞー!」

「キャー! あはは!」

子供の目線になって一緒に笑い合う航太は本当に楽しそうに仕事をしていた。
リカもそれを見習って子供たちに笑顔を向ける。

そうやって楽しく二年ほど仕事をしてきた。
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