先輩が愛してくれた本当のわたし

「ごめんごめん、プール教室代わるよ」

「……今日先輩と時間被ってますけど?」

「マジか! 困ったな」

「絆創膏でごまかせますかね?」

「そうだなぁ……」

と考えつつ、航太はこっそりと冷や汗をかく。
今リカが指摘したキスマークは見えるか見えないかのギリギリの位置にあるのだが、実は二の腕や背中側にもキスマークを付けた記憶があるのだ。
口調からするに、リカはそれらには気づいていないと思われ――。

(……やっべぇー!)

航太は欲望にまみれたあの日の自分を殴りたくなった。
Tシャツに隠れるからいいだろうなどと、なんて浅はかな考えだっただろうか。考えなくともわかったはずだ。自分たちは水着になる仕事があるのだと。

「……リカちゃん、しばらくプール教室俺がやるわ。シフト見直そう」

「そうしてもらえるとありがたいです。今日はどうにもなりませんけど」

「いや、どうにかしてみせる。とりあえず、水着にはならないで。本当に俺が悪かった。今度から気をつける」

「……今度からは見えないところにしてくださいね」

ムスッとしながらも可愛いことを言うリカにときめきを覚えつつ、航太はささっとTシャツを着せキスマークがはみ出ていないことを確認すると、ダッシュで事務室へ向かった。

ちょうど杏介が早番の仕事を終えて帰ろうと身支度を整えているところだ。
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