辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 大学の入学祝いに両親からプレゼントされた腕時計で時間を確かめると、現在は十五時過ぎ。

 大学は冬休み期間なので、十三時から二十一時までフロントで働いている。

 今朝、父と朝食の際に顔を合わせたときはなにも言っていなかったし、ミスをした覚えもないので呼ばれる理由が思いつかない。

 オフィスである隣の建物に歩を進め、エレベーターに乗り込んで最上階である七階のボタンを押す。

 ホテルの方は十二階建てで、上昇するガラス張りのエレベーターからは眼下に美しい日本庭園が望めるが、こちらは窓のない無機質な庫内なので見ることはできない。

 大きな鏡に映る自らの全身をチェックしながら、紺色のブレザーとタイトスカートの制服の身だしなみを整える。

 肩甲骨より少し長い生まれつきブラウンの髪は、うしろでひとつに三つ編みをしている。

 鏡に映る顔は無意識に眉根を寄せていた。目はくっきりアーモンド形の二重で、鼻筋も通っている。友人からは美人だと言われるが、私にはそう思えないのは、唇がぽってりしていて、どこか少しアンバランスに感じられるせいかもしれない。

 アルバイトがないときはすっぴんだが、フロント業務中はきちんとして見えるようナチュラルにメイクを施している。

 エレベーターが七階の最上階に到着した。

 ここは重役フロア。初めて踏み入れた階なのでキョロキョロしながら社長室を探す。

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