辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 クリーム色のコートを脱いで、預けた荷物を待つ間、先に船内新聞をチェックしたり、セーフティーボックスの場所を確認したりして過ごす。そのうちに荷物が運ばれてきて、キャリーケースを床に広げて荷物の整理を始めることにした。

 一カ月近くこの部屋に滞在するので、荷物をすべて出して、クローゼットや戸棚の中へテキパキとしまう。

 キャリーケースも悪天候のときに転がらないようにクローゼットの中に入れた。

「ふぅ~これでよしっと。パッキングには時間がかかったけれど、出すのは早いね」

 前屈みだった体をまっすぐにしながら独り言ちて、腕時計を見る。

 十四時三十分を回ったところだ。そろそろデッキに出て出航セレモニーを見たい。

 すぐには才賀さんも来ないよね?

 出航の雰囲気を味わおうと、コートを羽織りポケットにスマホとカードキーを入れて部屋を出た。

 乗客たちがいるデッキに出てみたら、周囲は見送りの人々で賑わっていた。乗客のうれしそうな表情を見て、これからいよいよ出航なのだと実感する。セレモニーのための正装した楽団なども見送りの中にいて、出航前の華やかさに目を見張る。

 セレモニーが始まり、今回の旅が特別なのかいつものことなのか、楽団の演奏が始まった。

 デッキにいたスタッフからピンクとブルーの紙テープを手渡される。

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