辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 白い封筒には達筆な字で【上原和泉様】と書かれている。

「ありがとうございます」

 どうしてレセプションを通して手紙を……?

 封筒を受け取り、中身を見ないままエレベーターに乗って部屋に戻った。

 先ほどまで座っていたソファへ腰を下ろし、手に持っている封筒を見つめる。

 なにが書かれてあるのだろう……。

 手紙などとまだるっこしいことをせず、会いに来てくれればいいのに。

 ひっくり返してみると、【才賀巧】とある。

 しっかり封がされていて、レターオープナーを探しに小さなデスクまで行き、引き出しの中に見つけてその場で使う。

 ドキドキする心臓を気にしないようにして、半分に折られた手紙を開いて目を通す。

「え……? 嘘!」

 そこに書かれてあったのは想像もつかないものだった。

【仕事の都合でそちらへ行くことができなくなりました。旅を楽しんでください。また連絡します】

 来られないって、どういうこと……?

 私はお見合いを断られたの……? でも、また連絡するって……。

 サーッと血の気が引いていく感覚に陥って、すぐ近くのベッドに座った。

 お見合い相手が乗船していない事実に、がくぜんとする。

 なにかの間違いかと何度も手紙を読むが、内容は変わらない。

 どうしよう……。父は才賀さんから連絡を受けているのだろうか。

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