辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 時刻は十七時を回っているが、この時間なら父はまだ執務室にいるはず。

 スマホを出して電話をかけたが、商談中なのかつながらない。

「はぁ~」

 スマホを持っていた手を投げ出してベッドに仰向けになった。

「もうっ!」

 横浜に引き返すことなんてできないし、次の寄港地から帰国しろって言われるのも困る。最後の寄港地のグアムまで行ってあちこち見たいのだから。

 こちらからあえて父へ連絡をしなくてもいいのではないか。

 せっかくの豪華客船の旅だ。帰国するまで楽しまなければもったいない。

「お見合いできなかったのは私のせいじゃないわ。才賀さんの仕事の都合だもの。割りきって楽しもう!」

 帰国したらどうなるのかわからないけれど……。

 よしっ! 船内を散策して夕食を食べよう。

 気持ちを切り替え、財布とスマホでいっぱいになるくらいのミニショルダーバッグを肩から斜めがけして部屋を出た。

 一番大きなダイニングルームは5デッキにあるが、6デッキにレストランがあるようなのでそちらへ足を運んだ。劇場や映画館の狭間にさまざまなジャンルの飲食店が点在していて、大勢の乗客が夕食を楽しむ様子が見える。

 デッキ奥側のライトを落とした場所を覗くとそこはカジノで、富裕層とみられる男女らがすでに興じているようだ。

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