辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
重役フロアにもホテルと同様、モスグリーンの絨毯が敷かれている。ほかの階はリノリウムの床だ。
シンと静まり返る中、おそるおそる廊下を進み、突きあたりで社長室のプレートがかかっているドアを発見した。
ノックするとすぐに、秘書の満島さんが現れる。
「満島さん、おつかれさまです」
わが家はホテルから車で二十分ほどのところの渋谷区にあり、父は運転手つきの社長専用車で通勤している。たまに満島さんが父を送り届けることもあり、私は小さい頃から顔を合わせている。おそらく今は四十代で、とてもまじめな男性だ。
「和泉さん、おつかれさまです。お待ちしていますよ」
社長室は、満島さんのいる秘書の部屋の先にあるようだ。
満島さんは体を横にずらして私を促す。
「あの、なにか聞いていますか?」
呼ばれるのが初めてなので、嫌な予感しかない。
「いいえ。先ほどから上機嫌なので、そんな困惑した顔にならなくても大丈夫かと」
上機嫌……。
父は普段から気難しい性格で、自宅でも上機嫌なところを久しく見ていない。
満島さんの言葉に背中を押され、コクッとうなずいてから社長室のドアをノックした。
「どうぞ」
中から父の声がして、私はドアを開けた。
「失礼します」
入室すると、父はプレジデントデスクから離れてこちらへ来るところだった。
シンと静まり返る中、おそるおそる廊下を進み、突きあたりで社長室のプレートがかかっているドアを発見した。
ノックするとすぐに、秘書の満島さんが現れる。
「満島さん、おつかれさまです」
わが家はホテルから車で二十分ほどのところの渋谷区にあり、父は運転手つきの社長専用車で通勤している。たまに満島さんが父を送り届けることもあり、私は小さい頃から顔を合わせている。おそらく今は四十代で、とてもまじめな男性だ。
「和泉さん、おつかれさまです。お待ちしていますよ」
社長室は、満島さんのいる秘書の部屋の先にあるようだ。
満島さんは体を横にずらして私を促す。
「あの、なにか聞いていますか?」
呼ばれるのが初めてなので、嫌な予感しかない。
「いいえ。先ほどから上機嫌なので、そんな困惑した顔にならなくても大丈夫かと」
上機嫌……。
父は普段から気難しい性格で、自宅でも上機嫌なところを久しく見ていない。
満島さんの言葉に背中を押され、コクッとうなずいてから社長室のドアをノックした。
「どうぞ」
中から父の声がして、私はドアを開けた。
「失礼します」
入室すると、父はプレジデントデスクから離れてこちらへ来るところだった。