辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
「和泉、呼び出してすまない。そこに掛けなさい」
応接セットの黒革のソファを示され、三人掛けの方に座り、父は斜め前のひとり掛けに腰を下ろした。
父は六十歳になったばかりで、私が二十二歳なので第一子を持った年齢にしては遅い方だ。母とは私が六歳のとき離婚している。その二年後に現在の継母、久美さんと再婚し、子どもをふたり授かった。
腹違いの妹、香織は十四歳で中学二年生、弟の櫂は十二歳で小学六年生。
いずれ櫂に父の後を継いでもらうのが父の夢であるのは知っている。父は昔気質の人で、経営の舵取りは男性がするものという考えだ。だから私がどんなにがんばっても、父の後は継げないだろうし期待もされていない。
でもこの業界が好きだし、父のことも尊敬しているから、櫂が一人前になるまで父を支えていけたらと思っている。
「呼ばれるなんて初めてだから驚きました」
「初めてだったか。和泉のホテルでの働きぶりは、いつも褒められているよ。和泉のような娘がいて、私は鼻が高い」
父から面と向かって褒められるなんて滅多にないので、呆気に取られる。
「和泉、これに目を通してくれないか」
父からファイルを差し出され、受け取って開く。
それは今年度の途中までの収支決算書だった。
「私がこれを見てもいいの……?」
「ああ。うちの現状を把握してもらいたい」
応接セットの黒革のソファを示され、三人掛けの方に座り、父は斜め前のひとり掛けに腰を下ろした。
父は六十歳になったばかりで、私が二十二歳なので第一子を持った年齢にしては遅い方だ。母とは私が六歳のとき離婚している。その二年後に現在の継母、久美さんと再婚し、子どもをふたり授かった。
腹違いの妹、香織は十四歳で中学二年生、弟の櫂は十二歳で小学六年生。
いずれ櫂に父の後を継いでもらうのが父の夢であるのは知っている。父は昔気質の人で、経営の舵取りは男性がするものという考えだ。だから私がどんなにがんばっても、父の後は継げないだろうし期待もされていない。
でもこの業界が好きだし、父のことも尊敬しているから、櫂が一人前になるまで父を支えていけたらと思っている。
「呼ばれるなんて初めてだから驚きました」
「初めてだったか。和泉のホテルでの働きぶりは、いつも褒められているよ。和泉のような娘がいて、私は鼻が高い」
父から面と向かって褒められるなんて滅多にないので、呆気に取られる。
「和泉、これに目を通してくれないか」
父からファイルを差し出され、受け取って開く。
それは今年度の途中までの収支決算書だった。
「私がこれを見てもいいの……?」
「ああ。うちの現状を把握してもらいたい」