辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 これは私がホテルの経営に携わる最初の一歩だと思っていいの?

 父に期待をされているのだと、にわかに心が浮き立ってくる。

 その気持ちを抑えて書類に視線を落とし、羅列した項目や金額を確認していくが、しだいに当惑してくる。

 収入に対し、支出がものすごく多い。つまりクレストピアグループは赤字企業だとわかる。

「これは……本当に?」

 経営はうまくいっていると思っていた。

 各銀行から融資を受けているが、焼け石に水の状態。そればかりか返済金利が負担になっている。

「お前ももう大学卒業だ。うちのホテルの立て直しを担う一員になる。それを見てわかる通り、状況はかなり逼迫している」

「うちはつぶれるの……?」

 海辺に建つ千葉や静岡のホテルは、夏場はいいがそのほかの時季は思わしくないし、高輪に至っては、売上は下がり続けているが、税金や日本庭園に費やす維持費がものすごい金額だ。

 グアムの集客は一年を通して安定的だが、収入が抜きん出ていいわけではない。

 不安がよぎって、父を見つめる。

 こんな状況について話そうとしていたのに、満島さんは父の機嫌がいいと言っていた。たしかに目の前の顔は、苦慮しているようには見えない。

「赤字経営が続いていて、このままでは融資継続が危ない。これまでも人件費や無駄な費用の削減など、内部改革を実行してはきたが」

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