辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
「最高のアクティビティでした。カンガルーに触れられるなんて思ってもみなかったですし、いい経験になりました。子どもみたいにはしゃいじゃいました。弟の櫂がいたら私以上に喜んだかもしれません」

「弟さんか。いつか連れてこられるといいな」

「はいっ、絶対に気に入るはずです」

 にっこり笑う私に、コウさんは口もとを緩ませてビールを飲み干した。上を向いたときに動く男らしい喉仏に、また心臓がドクッと跳ねる。

「さてと、そろそろ戻る時間だ」

 私たちはツアースタッフの車でクルーズ船へ戻った。

 船内の部屋に入ってすぐ、ソファにドサッと腰を下ろした。

「はぁ~楽しかったけど、疲れたぁ~」

 朝から盛りだくさんの経験をして、心地よい疲れを感じている。

 やっぱり旅って、ひとりよりふたりの方が断然楽しい。この二日間を思い返してみても、サイパンのオプショナルツアーはおもしろみのない観光だった。

 さてと、もう一度シャワーを浴びて寝よう。

 ソファから立ち上がったとき、出航の合図の汽笛が聞こえてきた。

 今度の寄港地はシドニーだ。

 そういえば、コウさんと別れるとき連絡先をまたしても聞きそびれてしまった。

 私ってほんと抜けている。でも今日も会えたように、きっと会えるだろう。

 ふいに、車の中での会話を思い出す。

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