辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
「それはどうも」

 サラッと認めるコウさんにだんだん怒りの矛先が彼に向く。

 テーブルを両手のひらでバシッと叩く。

「風呂敷を頭からかぶるとか、猫背で歩くとか、そのイケメン度を下げれば誰も近づいてきませんよ」

 自分の口から出た言葉におかしさが込み上げてくるが、コウさんを睨みつける。

「おいおい、昼間からアルコールでも飲んでいるのか? 風呂敷をかぶったやつなんて不審者だろ。猫背も体に悪い。いいじゃないか、和泉が俺の彼女なんだから」

「彼女じゃなくて、彼女のふりです」

「わかったわかった。ところで、今夜船長主催のパーティーがあるだろう? 一緒に出てくれないか? 祖父母と申し込みをしていた?」

 ウエルカムパーティー以来、横浜港を出航してから何回かあったが、いまだに出席していない。ひとりだから参加しづらかったのだ。

 私は首を左右に振る。

「申し込みはしていません。今日の分は締めきっていますよね?」

「ひとりやふたりの追加は問題ないだろう。祖父母は君がいなくても大丈夫か?」

 そこでコウさんに、祖父母がいると嘘をついていたうしろめたさに襲われる。

 祖父母はおらずひとりで参加していると言ったら、この豪華客船にいる理由も話してしまいそうだ。

 今はまだ……。

「はい。大丈夫です」

 考えていることが表情に出ていたのだろう。

< 74 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop