辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
「もうっ、口がうまいとまた女性につきまとわれますよ」

「和泉がいるから大丈夫さ。ほら」

 コウさんは腕に掴まるようにジェスチャーをし、私は彼の肘の辺りに手を置いた。

 すごいな。エスコートも様になっている。旅行会社の一社員のはずだけれど、こういった場所にも慣れているみたい。

 急遽参加したというのに、私たちの席は船長のテーブルの隣で、少し離れたところにものすごく高いシャンパンタワーがあった。

 船長がそのシャンパンタワーにシャンパンを注ぎ、出席者は拍手をする。

 すべてのシャンパングラスに金色の液体が注がれると、スタッフたちが出席者に振る舞い、食事が始まった。

 コウさんは社交的で、八人が座る同じテーブルの年上の男女と如才なく会話をしている。

 私もホテルウーマンの端くれとして、少しでも場を盛り上げられるよう会話をした。

 料理はフレンチのフルコースでおいしいけれど、見知らぬ人たちとの会話は気疲れするので、コウさんがいなければ次回は参加しないと思う。

 気ままにレストランで好きなものを食べていた方がいい。

 デザートを食べ終え、もうそろそろお開きというところで、周囲を見回してみる。背後のテーブルに、あの由香さんという女性が座っているのが見えた。

 私はコウさんの方へ体を寄せる。

「コウさん、彼女がうしろのテーブルにいます」

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