辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
「和泉姉ちゃん、おかえり。待っていたんだよ」
櫂が手に持っているのは算数の問題集だ。それを私の顔の前にどんと持ってくる。
「ただいま。私じゃなくても、香織が教えられるでしょう?」
紺色のチェスターコートのボタンをはずし、パンプスを脱ぐ。
「香織姉ちゃんはすぐ怒るし、教えるのが下手なんだ。それによく間違えるし」
ふたりは二歳しか離れていないからか、頻繁に口ゲンカをする。
そこへ継母が現れた。かつて父の秘書だった久美さんは四十代前半で、細身の綺麗な人だ。
「和泉、おかえりなさい。寒かったでしょう、お夕食温めているわ」
私が八歳の頃に父は久美さんと再婚した。生みの母は不倫した揚げ句、離婚した一年後に交際相手の男性と一緒に交通事故で亡くなった。父と実母は政略結婚だった。
実母の死後、多忙な父はそばで働いていた秘書の久美さんと結婚を考えるようになったと聞いている。
母娘としての関係は良好で、彼女が産んだ香織や櫂と分け隔てなく育ててくれた。
「ただいま。うん。さすがクリスマス前ね、雪でも降りそうなくらい寒かったわ」
継母は縁談話を知っているのだろうか。表情からは読み取れない。
「櫂、お姉ちゃんは帰ってきたばかりなんだから、もう少し後にしなさい」
「う……うん」
母親にたしなめられ、櫂は口もとをゆがませる。
櫂が手に持っているのは算数の問題集だ。それを私の顔の前にどんと持ってくる。
「ただいま。私じゃなくても、香織が教えられるでしょう?」
紺色のチェスターコートのボタンをはずし、パンプスを脱ぐ。
「香織姉ちゃんはすぐ怒るし、教えるのが下手なんだ。それによく間違えるし」
ふたりは二歳しか離れていないからか、頻繁に口ゲンカをする。
そこへ継母が現れた。かつて父の秘書だった久美さんは四十代前半で、細身の綺麗な人だ。
「和泉、おかえりなさい。寒かったでしょう、お夕食温めているわ」
私が八歳の頃に父は久美さんと再婚した。生みの母は不倫した揚げ句、離婚した一年後に交際相手の男性と一緒に交通事故で亡くなった。父と実母は政略結婚だった。
実母の死後、多忙な父はそばで働いていた秘書の久美さんと結婚を考えるようになったと聞いている。
母娘としての関係は良好で、彼女が産んだ香織や櫂と分け隔てなく育ててくれた。
「ただいま。うん。さすがクリスマス前ね、雪でも降りそうなくらい寒かったわ」
継母は縁談話を知っているのだろうか。表情からは読み取れない。
「櫂、お姉ちゃんは帰ってきたばかりなんだから、もう少し後にしなさい」
「う……うん」
母親にたしなめられ、櫂は口もとをゆがませる。