辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 海外で暮らしていたから国際感覚が豊かで、女性に対してスマートなのはその影響なのかも。

「景色のいいところばかりだから、楽しめると思う」

 スイスに行けるとしたら、政略結婚での新婚旅行くらいかもしれない。

「……そうですね。いつか訪れたいです」

 政略結婚を思い出してズンと重い気分になるが、今はそんな思いに駆られている場合じゃない。楽しまなきゃ。

 それから他愛のない話をしているうちに、運転手がコウさんに「あと十分ほどで到着します」と英語で話しかけた。



 専用車で巡らせてもらっているので移動時間がかからず、あちこち赴くことができて、濃いシドニー観光になった。

 セント・メアリー大聖堂はふたつの塔を持つゴシック建築の教会で、建物の中は壮大な空間だった。主祭壇のうしろにある聖母マリアの戴冠が描かれたステンドグラスは、色が鮮やかでとても美しかった。

 シドニー水族館では初めてジュゴンを見られたし、オーシャン・トンネル・ウォークは左右、上にまでさまざまな海の生物が優雅に泳いでいた。

 数千匹もいる熱帯魚の中で、シュノーケリングで見た〝カクレクマノミ〟などもまた目にすることができた。

 古い町並みのロックス地区でお店を見たり、途中カフェに入って休憩したりして、ランチは私の希望でハンバーガーを食べた。

< 83 / 97 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop