辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 クルーズの旅に出てからあちこちでハンバーガーを食べていたので、味比べというか、思い出に残るのではないかと思ったのだ。しっかり写真も撮った。

 シドニー観光を満喫しているうちに夕方になった。

 次に車が止まったのはオペラハウスの近くだ。停泊しているクルーズ船も見える。

 オペラハウスの写真を撮っていると、コウさんが私の手を取る。手を握られたのは今日は初めてで、鼓動がドクッと大きく跳ねた。

「ミュージカルが始まる。行こう」

「え? ミュージカル? オペラハウスで?」

「そうだ。日本でも映画が上映されたアメリカのダンスミュージカルだ」

 コウさんは映画のタイトルを口にした。

「見たことがあります。それをここでミュージカルに?」

 思いがけない話に呆気に取られ目を丸くする。

「ああ。チケットを取ってもらえたんだ」

「すごくうれしいです。ありがとうございます!」

「終わったら食事をしよう。出航までには間に合う」

 滅多に体験できないサプライズを、いとも簡単にコウさんはプレゼントしてくれ、あたり前のような態度は崩さない。やはり女性の扱いがスマートな人だと思った。

 父親が大手ホテルグループの社長で生活には余裕があったが、父は仕事に、継母は子育てに忙しく、劇場などへ連れていってもらう機会はなかった。

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