辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 パンフレットをトートバッグにしまい、スマホを出して綺麗に写せる場所を求めてコウさんのもとを離れた。



 オペラハウスから近い、ハーバーブリッジがよく見えるオープンエアのシーフードレストランで、ロブスターや牡蠣などの贅沢でおいしい夕食を食べてからクルーズ船に戻ってきた。

 部屋に入ってドアを閉めてから、ため息を漏らす。

 異性と交際したことがない私にとって、コウさんと過ごした時間は信じられないくらい充実していて楽しい。

 どうしよう……コウさんが好き。

 今までごまかしていた気持ちは、確実に本物の恋になっている。

 でも、コウさんにこのまま恋し続けてはだめなのだ。

 のろのろと窓まで足を運んでテラスに出て、椅子に力なく腰を下ろした。

 あと一時間ほどでシドニーを出港だ。

 ビル群の夜景は、さっきまでコウさんと見ていたものよりも感動しない。

 彼と一緒に見るもの、聞くもの、体験することはすべて輝いていた。

「はぁ……」

 なんで、コウさんに出会ってしまったのだろう。会わなかったらこんな気持ちになることもなかったのに……。

 スマホのロックを解除して、今日撮った写真をスライドさせていく。

 楽しかったな。

 写真を見ているうちに、タップミスで櫂と香織がにっこり笑っている姿が画面に映し出された。

「あっ!」

 スマホをいじる指が止まる。

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