貴方が拾ってくれた恋
そして放課後。俺が所属しているのは陸上部。グラウンドに向かうと、既に同じ種目の1年、和樹が準備をしていた。

「おっす」
「あ、想太先輩こんちは」

準備をしながら早速聞いてみる。

「なあ、1年に、れいって名前の女子いない?」
「れい?…ああ、遠山さんですか?」

遠山って名字なら、確かに名字のイニシャルはtだな。

「多分その子。なんかハンカチ拾ったんだけど、reiって刺繍が入ってたから」
「へえ、同じクラスですよ。遠い山に、礼儀の礼に(ころも)で、遠山礼衣」

とおやまれい…、やっぱ、聞き覚えある気がするんだけどな、思い出せない。

「届けときましょうか?あの子可愛いし、話すきっかけ欲しいなって思ってて笑」
「あー、気持ちはありがたいけどそんな下心丸出しのやつには預けられないなー」

和樹とは同じ部活で活動し始めてまだ1ヶ月も経っていないのに、軽口を叩き合うくらい仲良くなれた。

「2年の知らない先輩に届けられるほうが怖くないすか笑」
「いや俺そんな怖いオーラ出してないから」
「先輩背高いしビビると思うけどなー」
「だいじょーぶ、にっこにこしとくから」
「えー、気をつけてくださいよ、なんかあの子すごい繊細な感じするんで」
「へー、そーなんだ、情報ありがと」

繊細な感じの可愛い子、か。
どんな子なんだろ、俺はまだ見ぬその女の子の妄想を膨らませる。仲良くなれたらいいな。
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