繋がりギャから、恋人になりたくて

繋がりギャに恋心を抱くまで

最高のライブを終えた。

幕が閉じられ、ステージ裏で息を上がったバンドメンバー達は満足そうな顔をしていた。


カーテンを突き抜け観客達の黄色い声援が聞こる。
ステージを片ずけて、息が上がったままに客席に向かった。


ファン達に挨拶しながら物販でcdを売っていると、1人の女の子がcdを買った後に話しかけてきた。

彼女は長い金髪姿に、胸が強調された黒いドレスを着ていて、一見すると白人系の外国人にも見える出で立ちをしていた。

年齢は20歳前後だろうか？
世の中に期待してなく斜めから世間を見てる年頃の女性と言う雰囲気で、綺麗な薔薇には棘があると言う言葉が良く似合う女性に感じた。

ちょうどひと段落ついた所で、私は彼女にライブを見てくれた御礼を言って「何処から来たのですか？」と訪ねた。

彼女は「横須賀から来ました」と答えて口を噤んだ。

私は「cd買ってくれて有難う！良かったら後で話そう」と挨拶をして事務作業の片付けに取り掛かった。


イベントが終わり、そのままライブハウスで朝まで打ち上げをする事になった。

大半のお客さんが帰る中で、ライブハウスの隅の方の灰皿で煙草を吸っている金髪の女の子が目に付いた。

そういえば、さっきCDを買ってくれた子かな？と思いながら彼女に近ずいた

人違いだとまずいので「この後、此処で打ち上げするから良かったら一緒に飲もう」と声を掛けると
彼女は「はい」と答えて私の後に着いてきた。


ライブハウスのホールに並べられた折りたたみ式のテーブルと机。

BAR営業が始まり80年代の古いビンテージロックが店内に流れた。


私は椅子を引いて後ろに着いてきた彼女に座る様に促した。

彼女は軽く会釈して座り、私も隣の席に座った。


直ぐに今日のイベントを主催した、ライブハウスのスタッフでもあり先輩ミュージシャンのマリーが、酒を持って私の真正面の向かいの席に座った。

彼は綺麗な茶髪のロン毛で如何にも夜の世界が似合う紳士的な優男だ

小綺麗な細身のスーツを着ていて、長身で華やかな香りを漂わせた、男が見ても美しい男性だ。


マリーは私と彼女にテキーラのショットを手渡し優しい笑顔で「取り敢えず乾杯しよう」と微笑んだ。

強い酒を喉に流し込むと、食道からお腹にかけて焼ける様な感覚がした。

まるで自分がドラゴンになって炎を口から噴き出した気分だ。

直ぐに脳がぶっ飛んでクラクラした。
世界が歪んで虹がかかった様に美しい空間にいる様な感じがした。

マリーは手招きして席に座ってない女性を呼んだ。
直ぐにマリーの両サイドに女性2人が座り、私と私の隣に居る彼女。

そしてマリーと彼の両サイドに座る女性の5人で酒を飲む事になった。


他の席でも幾つかのグループが出来ていて、皆んなそれぞれ楽しそうに酒を飲んでいた。


隣からタバコの匂いがした
テーブルに置いた彼女のタバコの箱は、真っ黒で白いドクロの絵とアルファベットでDEATHと書いてた。

見るからに毒々しいタバコを吸って、真っ黒なドレスに日本人離れしたロシア人の様な出で立ちが、なんだか危険な女の雰囲気を醸し出してて、魔女の様な女性に見えた。

私は彼女に名前を訪ねた。
彼女は白く甘い煙を吐いて「リサと言います」と答えた。

おもむろに彼女は組んでた足を解き左右反対に組み直した。

その時に、左の太ももに赤いTattooが一瞬見えたが、私は直ぐに眼を逸らしたので、何が描かれているのかは分からなかった。

ただ彼女が普通じゃない女性だって事は感じた。


サラは酒の入ったグラスを小指で掻き回した。
氷がカラカラと音をたてていた。

酒の付いた吸いた小指に吸い付きチュッパと音を鳴らし
優しくグラスにKissするかの様に、一口酒を飲んだ。

酒を飲むだけで人の視線を釘付けにする一連の仕草が洗練された大人の女性の色香を醸し出してて、きっと夜の世界で生きてきた女性なんだろうなと感じた。

マリーも同じ事を思った様で「仕事は何やってんの？風？それともキャバ？」と笑顔でリサに尋ねた。

マリーの屈託ない笑顔の問い掛けに彼女は困りながらも笑顔で「キャバクラです」と答えてた。

私は職業の事とか聞いちゃいけない様な気がしていたのに
一瞬で人の垣根を超えて仲良くなるマリーの人間力に驚いた。

だからマリーは女性を引きつけるんだろうなと感じて、素直に感銘を受けた。

マリーとサラが楽しそうに話してるのを見て、こんな風に自分も人と気軽に話す事が出来る人間になりたいと感じた。


酒を飲みながらマリーが隣に座ってる左右2人の女性の胸を揉み始めた。

マリーの横に座る彼女達はマリーが大好きな様で身体を触られる事を喜んでた。

顔を赤らめて快楽と高揚感で気持ち良さそうに喜んでた。

マリーは目配せして、お前もサラの胸を揉めと言わんばかりに合図した。


自分がサラの身体を触っても嫌がらないだろうと思ったが、なんだか気が引けた。

女性の身体を触りたいて願望はあったけど、身体を触った所で何も生まれないというか、意味が無い気がした。

彼女が触って欲しいと言えば喜んで幾らでも触るのだけど、硬いブラジャーの上から胸を揉む事と、自分の評価を下げかねない行動を取る事が釣り合わない気がして躊躇した。

サラは酒が好きな様でマリーが酒を勧めるとゴクゴクと飲み干した。

サラの事が心配になって、これ以上飲まさない方が良いとマリーに言うと、マリーは「お前も飲んでみろ」と彼女が飲んでたグラスを僕に渡した。

サラのグラスに注がれた酒は水の様に薄く、幾ら酔っていても流石に気付くだろうと感じた。

僕は、サラの酔っ払いながら勧められた酒を無理しながら飲んでる行動全てが演技なんじゃないかと感じて、自分だけが皆んなに、たばかれてた気がした。


テキーラを喉に流し込みながら、視界に入った天井に薄っすらと溜まった白色をした煙草の煙を見上げて居ると、サラが吐いた限りなく透明に近いBlue色の煙が立ち昇って煙の下に溜まった。

白い煙と青い煙が重なり、境界線が曖昧になって混ざっていくのを見てるとサラが僕の肩によたれ掛かってきた。

僕は、「もうこれ以上飲まない方が良いよ」と彼女を気遣いながらマリー達に視界を移した。


マリーは左側のロングヘアーの女の子と楽しそうに話していて、右側に座ってる女の子が寂しそうに下を向いてた。

右側の女性は栗色の髪の毛で、髪型はショートヘアーだ。

白色のキャミソールが可愛いくてよく似合っているけど、目元は切れ長で鋭い印象を受けた。


僕は下を向いてる彼女に「飲んでる？」と声を掛けた。

彼女は僕の方を見て「飲んでますよ」と、まるで感心がない軽い返事をした。


私は「今日は誰を観に来たの？」と彼女に尋ねた。
彼女は自分の横で別の女性と戯れてるマリーを見ながら「マリーさんを」と答えた。

せっかく観に来た大好きなアーティストに、ほっとかれてる彼女の事を思うと、なんだか不敏な気がして「マリーさん、凄く酔っ払ってますね」と声を掛けると「いつもの事ですから」と彼女は答えた。

その彼女の返答にマリーとは長い付き合いで、親密な関係なんだと感じた。

そして、自分の事を放置する男を寂しいのに見守る大らかさに感銘を受けて、私は彼女の事を素晴らしい人だと感じた。


名前を聞くと彼女は「ルナと言います」と笑顔で答えた。

ルナちゃんは駆け出しのアイドルらしく、このライヴハウスでも何度か歌っているそうだ。

彼女のきっちりとした出で立ちから、何と無く清純派アイドルなんじゃないかと感じた。


ルナは、僕が話し掛けると笑顔で愛想よく答えてくれて、なんだか嬉しくなった。

無愛想で近寄りがたい雰囲気だったけど話しかけて良かったと思えた。


僕がルナと話してるとサラが突然、僕の腕をぐいっと引っ張って「この人、チャラいんだけど！」とマリーを笑顔で非難した。

サラの話を聞くと、マリーが経験人数やお酒の失敗談などを根掘り葉掘り聞いてくると言うのだ。

ルナは会話を妨害されて少し怒っている様な感じがして、僕は目配せしてサラの話を聞いた。


サラは夜の蝶だけあって会話が上手だ。
僕が何も言わなくてもサラの方から、どんどん話しかけてくれて、あっと言う間に時間が経つ。

気が付いたら彼女の話に引き込まれていて
時間が、あっと言う間に経っていた。

僕に抱きついて話してるサラを見てライブハウスのマスターが「良かったら楽屋使ってください」と僕達に言った。

さすが、東京のスラム街と言われてる場所にあるライブハウスだけの事はあるなと僕は驚いた。

皆んなが笑顔で楽しかった。
でも、片想いが報われないルナの片想いだけが気になって、僕は時折サラと会話しながらルナにも話しかけた。

始発の電車が動き出す時間になってライブ終わりで疲れていた事もあって僕は先に帰ると皆んなに伝えた。

するとサラも一緒に帰ると言って2人で帰る事になった。


2人して席を立つとマリーが、すかさず大声で「おめでとうー！！」と拍手をして、ライブハウスで飲んでいた皆んなが一斉に僕達を見て祝福の拍手を送ってくれた。

僕は恥ずかしくて堪らなかったけど嬉しかった。
皆んなの優しさと暖かい雰囲気を全身で感じた。


駅に向かって歩きながら、2人でたわいも無い会話をしていた。

彼女を見ると手をブラブラさせながら歩いていて、僕はドキドキしながら手を握ってみた。

飲み会で打ち解けたと思ったし、嫌がれはしないだろうと思ったからだけど内心は不安だった。

手を繋ぐと彼女は一瞬驚いて、すぐに僕の腕に抱きついて来た。

僕は嬉しくて彼女の手を強く強く握った


僕達は近くにあったコンビニに入った。
僕が「何か飲みたい物はない？」と聞くと彼女は缶ビール6個入りのパックを持ち上げ僕が持っていた買い物カゴに入れた。

僕は驚いて「こんなに飲めるの？」と聞くと、彼女は笑いながら「飲める飲める」と答えた。

僕は彼女の事を、とんでも無く、ぶっ飛んでる危ない奴なんじゃないかと思って、警戒心と不安感が入り混じる高揚感を感じた。

何か、とんでもない出来事が起きる様な予感を感じたんだ。


　ホテルに入り服を脱いで行く彼女を見てようやく安心できた。

　その行動が私に対する服従の意を示して居るからだ。

　仮に私の持ち物を全て盗んだ所で、女の身体を差し出す見返りを考えれば対等な取引だ。

　私の持ち物を盗み、捕まるリスクを犯しでまで自分の身体を差し出すとは思えない。

私はようやく安心感を得た。

　お菓子を食べるように、脳が欲しがるジャンクフードを思うがままに喰らった。

　身体には良く無いと分かっていたし
自分にとって得るモノは何も無い行為。

　タバコや酒と同じで、脳が欲しがるから彼女を摂取した。

　無数の細菌とDNAが私の身体に吸収される事を感じて、私には無かったモノが入り込み溶け込んで行く事を感じた。

　まるで、初めて大自然の中を自力で生き抜いた雑草を食った様な感覚で、自分の身体に危機を及ぼす病原菌に感染する危険と、強く逞しい野生の野草を食べ自分の身体が強くなった気がした。

　得体の知れない彼女は、危険を侵しても食う価値がある食い物。

そんな風に感じた。


　朝起きると、コーヒーを飲みながら彼女は、僕に対する好感を丁重に説明してきた。

　そんな彼女が神妙なおもむきで、僕に伝えたい事が有ると言ってきた。

　僕の脳裏には瞬時に彼女が僕に伝えようとする内容の候補が複数浮かんだ。

　厄介な病気持ちの可能性や金銭的援助を求める内容。
何かの事件に巻き込まれていてかくまって欲しい等だ。

　消去法で、住居と一定の金銭援助を求める可能性が最も高いと思ったし、それが1番厄介だと思った。

　何処の馬の骨とも分からない人間を自分の住居に住まわす事は、手持ちの貯金全額を奪われる事よりリスクが有る。

　もしもこの女が火事や漏水など第三者に対する損害を発生させたら、厄介な損害賠償に巻き込まれるからだ。

何より一時的に金銭を渡すより数日間住まわす方が遥かに金が掛かる。

　私は脳内で、彼女が発言する確率が高そうな告白内容にベストと思われる回答を数十件用意した。

　そして彼女に言った。
「どうしたの？何でも遠慮しないで言って」


　彼女は自分の生い立ちについて語り始めた
高校を卒業した後はすぐに家を出て一人暮らしを始めたそうだ。

　生きて行くためにsmクラブで働いたりしていたらしい。
彼女にとって自分の過去を打ち明けるのは相当な覚悟が要った様だ。

　私は胸を撫で下ろした
私が想定していた、自分に不利益が被る様な内容で無く安堵した。

　他人が自分を拒絶する事を極度に恐れた態度が可哀想で見てられなかった。

どうして彼女が、そこまで自分の歩んで来た人生を卑屈に捉えて居るのかは分からなかったけど、とても悲しい気持ちになった。


　私は彼女を抱いたまま寝ていた
私が目覚めた挙動で彼女も起きた様だ。

　彼女は突然聞いた事のない男の名前を呼んで私の事を強く抱き締めてきた。

　私は驚いて身体が一瞬硬直した。
私の挙動で、名前を間違えて呼んだ事に気付いた様だった。

　彼女は私の腕から離れて、私の顔を見て「ごめんなさい」と言ってきた。

　彼女が、私とリスクを冒した理由を察して、私はもう一度彼女を抱き寄せて彼女の頭をゆっくり撫でた。

　それでも彼女は交差した頭を離し、私の目を見てもう一度謝ってきた

　私は予想外過ぎて自分の人生でも一二を争う程に心が動揺した。

　自分なら名前を間違えて呼んでも絶対に誤魔化す。

　名前を聞いても忘れる事の方が多いので、会話をしながら名前を聞き出す事なんて日常的にやってる事だ。

　相手の名前を間違えるなんて取り返しの付かない失敗をして動揺してる自分を相手に見られながら謝る事なんて、自分には出来ない。

　私は彼女に見られたくなかった。
ショックを受けてる自分の姿を見られたくない気持ちが大きいのに、もっと大きなショックを受けてる彼女の方が、自分から私に見られる行動を取る事が信じられなかった。

　肝が据わって居ると言うか、弱かったり欠点が有る自分を隠して偽ろうとする気がまるで無い事に驚きを感じた。

　この女の前では心まで裸にされる様な恐怖に似た危機感を感じた。

　常に人より、上の立ち位置から優しさや、寛容を示すのは慣れているし、それが1番安心する。

　自分が掌握出来ない存在。
自分より能力的に勝る相手には警戒感を感じる。

　それが私の生き方だし、そう言う性格だからだ。

　故に私は、目の前の素直に謝り私の目を見て反応を観察してる目の前の裸の女が、自分より優れていると本能的に感じ、尊敬と危機感を感じた


　名前を間違えて呼んでも怒らなかった私の事を、彼女はとても評価してくれてた様で、嬉しそうな気持ちが伝わってきた。

　私は、男なので性行為をするだけの女に大した拘りは無い。

　少しでも多くの女に子孫を残させるのが雄の本来の繁殖戦略なので、単純に1人の女を手篭めに出来た事が嬉しかった。

　「どうしてこんなに好きなんだろう」と私に抱きついてくる彼女を見て、この女の行動は何処まで計算して確信的にしてるんだろう？と疑問を抱いた。

　私が彼女の事を特別な女性として愛してない事は理解してる様だったし、彼女が取っていた男を惚れさす様な仕草や行動の数々。

　彼女が、唯の純粋な少女なのではなく、男を手球に取るタイプの女であると私は確信してた。

　ライブ後で疲れていた事もあったし一夜に色んな事が起きすぎてた。

　私は1人になってゆっくり考えたかったので、今日は帰る旨を伝えると彼女はとても寂しがってた。

　「また連絡するから」と言って帰ろうとする私を何度も引き留め話したいと言うので、少し遅い朝ごはんだけ一緒にたべる事にした。


　ホテルの近くにあるサブウェイでサンドイッチとコーヒーを買ってオープンテラスに2人で座った。

　通勤時間はとうに過ぎて昼食には早すぎる時間だから人は、あまり居なかった。

　私はライブ後の疲れが一気に出てたし、顔に日焼け止めを塗って無い事が気になってた。

　さっさと帰ってぐっすり寝て万歳の状態で彼女と接したいと言う思いが強かった。

　疲れて余裕がない状態だと、些細な事でイライラしたり、気を使えなかったりして良い男を演じれ無い気がしてたからだ。

　それが、少なからず態度に出てしまって居て、彼女が無理に引き留めてる雰囲気になっていた。

　そんな状態を感じ取って、彼女が申し訳そうだった。

　私は彼女が気にしない様に、変に気を使いサンドイッチの味や、空気が綺麗で朝食が美味しく感じる事などを話題にして場を和ませてた。

　目の前の女性の為に、自分が気を遣っていると言う状況が、私に取っては心地よかったし、心から安心できる状態だった。

　初めは嫌々だったけど、彼女と食事をしてる状況が、いつの間にか心から安らぎを感じ楽しかった。


　彼女はまた会ってくれるのか？と何度も聞くので私は同じ様に必ず連絡すると答えた。

　僕には後ろめたさが有った
彼女は運命の人だと思わなかったし、何と言うかピンとくるモノが無かった。

　嫌いじゃないし可愛いと思ったけど、
目を閉じれば幾千と浮かぶ今まで見て来た星々の中で、彼女だけが特別に輝いてる様には感じなかった。

　あくまで限りがあって、終わりの見える関係止まりだと感じた。

　だから、彼女を騙すように愛の言葉を言う事は出来なかった。

　その気持ちが態度に出て居たのかも知れない。
彼女は僕に、自分の事をどう思うのか詳しく聞いてきた。


　私は素直に立派だと思うと伝えた。
1人で自立して生き抜いてきた彼女の事を心から尊敬した。

　私は財閥の後ろ盾が無ければ何もできない。

　この身一つで放り出されても、安月給で誰かの下で働くなんて想像しただけで蕁麻疹が出る気分だ。

　そんな環境で働いてる彼女の事を凄いと思ったし、女優の様な所作が見ていて楽しいと感じた


　彼女は凄く喜んでくれたし、僕が好きかな事が笑顔から伝わってきた。

　だからこそ僕は複雑な感情だった
僕は昨日の夜に、全ての好きな気持ちを彼女に注いだ。

　その時に、僕が彼女に抱いてた好きな気持ちが、これ以上大きくなる事は無いと本能的に感じた。

　そう感じた理由はハッキリとは判らない。

　敢えて定義付けるなら、僕が尽くす側で、彼女は尽くされる側という関係性が出来上がってた。

　彼女の気分を良くする様に、会話や金銭の支払いを全て僕が行い、部屋もスイートを抑えた。

　極端な事を言えば、彼女が僕を好きになるのは当然の結果で、全て僕の思惑通りに事が運んだ。

　その過程で、彼女に対して特別なモノを僕は何も感じなかった。

　彼女の精神的な苦痛を僕が和らげ、彼女は僕に快楽を提供する。

　それ以上の関係に進展する事を、僕が望む事は無いと感じた。

　だから僕は、彼女の彼氏にはならない。
運命の彼氏が見つかるまでの繋ぎとしての役割を全うするべきだと感じた。


　私は彼女に今は恋人を作る気は無いと伝えた。
彼女はセフレでも良いと言ったきたので、私は首を横に振って断った。

　自分を一途に愛さない人間は信用できない
私が誰を愛すかは私の自由だし、彼女に私を独占させはしない。

　だけど私に愛して欲しいなら、彼女は私だけを追い求め続けるべきだ。

　私にとって彼女は彼女昇格候補の1人の女で、彼女にとって私は世界唯一の理想の男性

　彼女は私を愛しているかもしれないけど、私は彼女を愛して居ないのだから、この関係性が最も適切だ。


　私は彼女に言った
「セフレとか要らない、俺を本気で愛す気がないならもう会う気は無い」と伝えた。

　彼女は、私に抱きつきながら「どうしてこんなに好きになったんだろう」と顔を埋めて来た。

　そういう一連の、男に愛される女としての愛嬌を上手に出す行動が、彼女の男に愛される技術力の高さを表して居て、彼女からは色んな事が学べそうだなと感じた。

　そして、この「あざとい」演技が無くなった彼女の顔を見たいと思った。

　それは興味と、私の中に有る支配欲が、そう言った感情を呼び起こしたのだろう。

　自分が安心する為に、心の底から彼女を従属させ支配したいと言う願望。

　この、彼女を支配したいと言う願望は、彼女への執着心の表れだ

　恐らく私はこの瞬間に彼女への恋をわずかにしたのだろう。