ハードリップ/オンナ上司はタラコ唇~♥

第3章/困った症状~💖

困った症状



”オレはヤバい…。神聖な職場で性欲ビンビンだ。…レジェンヌPTチーフの要職を与えられてて、二課の命運を背負ってる立場なのに、勤務時間の半分近くはあの人のマシュマロボディでアタマを占領されてる…。キツイわ、実際…”


その年の初夏…、風間トシヤは勤務先の新機軸を打ち出したリップ、レジェンヌ試供品の初期マーケティングの発案者として、本社承認を得た後、当該PTを先頭に立ってけん引していた。


ところが…。


「…風間!北九州支社への声かけ、何で私の”本メール”後に動かないのよ!この大バカが‼ラインなんか、履歴に触れられたらプライベート範疇のやり取りって捉えられるの、わかってんだろうが!脇が甘いんだよ‼」


8月初旬…、北九州から戻ったトシヤはアキに大目玉を食った。
皆の目の前で。


***


「すいません…。当地のモニター女性の口から、支社役員の口利きって告白されたんで…。他の支社とのリーディングでもケツっぺでしたし、テコ入れで、一秒でも早くしないとって気持ちが先行しました。どうせ、課長の裁可は降りると読めてたものですから…」


「バカヤロー‼我が社の裁断、見込み発信で動かれたんじゃあ、そんなの企業じゃないでしょーが!風間…、あんた、しばらく謹慎してなさい!その間はヤマダさんにあたってもらう。さあ、これからあなたからも詫び入れて頼んできなさいよ!」


それはもう、驚天動地のおカンムリであった。
その場でトシヤは、上席であるヤマダ補佐の前にしょぼしょぼと歩み寄り、頭を下げた。


「…ヤマダ補佐、すいませんが、この後よろしくお願いします。レジェンヌを…」


トシヤは悔し涙を必死で堪え、課内ではオポジションのボス格に謹慎時の代役を請願した。
それは自分でもかつてない低姿勢で…。


それに対し、ヤマダはあくまで事務的だった。


「ああ、課長からは聞いてるから‥。まあ、この際少し休めばいいさ。代わりは皆で何とか穴を埋めるつもりでいる」


トシヤは結局土日を挟んで9日間の自宅謹慎を命じられ、その日は夕方3時過ぎに社を出た…。


***


まだ明るいうちに自宅へ戻ったトシヤは、リビングの床に力なくしゃがみ込むと、右手の中にあったスマホの画像をほぼ無意識にアキのリップショットに切り替えた。
ここでどっと目が潤み、一滴、涙が頬を伝わり落ちた。


”はは…、どう考えても今回はオレの落ち度だ。ただでさえ、ヒラの一PT発案者が全支社に指示出しってんで、本社内でも非難に晒されてるし。ここで上の判断を先読みで北九州支社に軌道修正を出したとあっては、レジェンヌPT撤廃の声だって上がるだろうし、下手したら中原課長も責任が問われる…”


トシヤはモームーンでポーズ撮りした”彼女”の唇に涙目の視線を落としながら、頭を整理していた。
とは言え…、やはり、実物でなくとも”困った症状”はしっかり催していたが…。





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