ハードリップ/オンナ上司はタラコ唇~♥
二人は到達点へ…



「課長…。このレジェンヌ試供品の初期マーケティング戦略のプロジェクトがここまでやってこれたのは、本社HPのあなたのリップショットです!いいですか、各支社のHPでもトップは終始、あなたのその麗しい厚手唇なんですよ。…これまで、自分がかけたチェックの範囲では、そのレジェンヌ唇自体、嫌悪感や不快感を訴えたコメントはほんの数えるほどですよ。逆に称賛の方は数え切れなかった…」


「…」


「…とにもかくにも、各支社HPだってあなたのどアップ唇でNGなら、そ先のページもケチ付きで見られるってのがネット閲覧の心理セオリーです。要は、このキャンペーン中、その兆候は全くの皆無に等しかった。…課長、芸能人とかタレントとかの起用は、正規商品化したらそれなりの人選で対処すれば、どうにでもなりますよ。むしろ、話題がそこまで大きく広がったことをポジティブに捉えましょうよ」


「でも…、いくら何でも自信ないよ。私、モデル並みの美人なんかじゃないんだよ!」


「あのですね…、自分のこれからのシュミレーション・イメージを話しますね。課長の際は、唇はどアップでしたけど、お顔のお披露目は全身でいきます。淡いオレンジのスーツ姿で…。そのページには、あなたがこのレジェンヌを世に出したいと願い、試作まで作り上げた思いを綴って発信するんです。世の厚手唇女子に向けて…」


「…」


「…その時点では、あなたの唇アップの画像はすべて取り下げてる。これを以って、レジェンヌは試供品から我が社の目玉新商品へのステージに進むんですよ。そして、その新商品の市場戦略もあなたが、自ら厚手唇をもった世の女性たちに向けたレジェンヌ考案者として、営業部隊の一角を担う…」


「風間君…」


「最後の勝負、オレは渾身の思いで腕を振るいますから…。あなたの撮影にはそれなりの予算も取ってあるし、100%の絵柄が取れるまで僕もずっとつきます。これは言ってみれば、我々二人三脚のメインディッシュですよ。二人で最高の最後を作り上げましょう、課長…‼」


ここアキは目頭が熱くなった…。
そして、ハンカチを目に当てながら、「うん、うん…」と何度も頷き続けるのだった…。



***



12月初旬…。
各支社の厚手唇女子のモニターは、その素顔が順次、各支社HPに公開された…。
その話題がピークに到達する直前、本社HP上では、中原アキがリップモデルの主だったといことを明らかにした上で、その素顔をアップ、レジェンヌ誕生にまつわる発案者の立場からコメントを発信した。


その反応は、アキの懸念を吹っ飛ばす、極めて好意的な風潮を及ぼした。
というより、世の若い女性からは賛美の論調一色となったのだ。


すでにテレビや雑誌の取材やレジェンヌを取り上げるネット上の記事、SNSでの評価が溢れかえり、本社では即時、レジェンヌ正規品の製造に入る…。



***


「風間君…、ここれまで、本当にありがとう…。あなたの陰だわ」


会社の近くの喫茶店で、アキは込み上げる涙を拭いながら、トシヤに何度も何度も感謝の気持ちを告げていた‥。


「いえ…。僕はあなたを見つめながらレジェンヌの商品化実現を目指しただけです。そこの過程を、課長は二人三脚でずっと歩んでくれた。僕の方こそ、こんな経験させてもらって心から感謝してます。ありがとうございました…」


「ううん…。私はあなたを苦しめてたもの。それを知っていて、何も出来なかった…。ごめんね…。だから、”約束したこと”、思いっきりでいいから…。私、今ならあなたには、身も心もありのままで晒せるわ…」


「課長…、オレはあなたの魅力を自分で日々膨らましてしまっていたんです。確かに苦しかったですよ。ですから、たぶん、オレもありのままであなたを抱けると思う…」


二人の再約束の決行日は翌日…、トシヤの部屋でということで決した…。




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