ハードリップ/オンナ上司はタラコ唇~♥
二人の誘導
「…いいえ、やはり選択のリミットは迫ってますから、今回は明日のミーティングで風間案の可否をもって、本社予算枠を要求してのレジェンヌ積極マーケティング戦略を取るかどうかを決しましょう。ただし、今日この場で皆によって、レジェンヌを二課の命運をかけての勝負どころと捉える方針で一致したわ。それなら、多少のリスクを承知でも果敢にチャレンジという姿勢が前提になる。そこをまずは胸に刻んで、風間君のプレゼンと向き合ってください」
「はい…」
「その上で、皆さん判断を出してもらいましょう。…それで、何しろ私もこのレジェンヌには精魂を込めて作り上げたという自負があるので、最終の方針決定は多数決ではなく、私が決めるってこといいかしら?」
「異議なし!」
「賛成です…」
「私も…」
”アハハハ…、中原課長の一本勝ちだ。ヤマダのヤツ、何ともな顔して苦渋っ面だし”
***
「じゃあ、この件はこれまでにして、後は楽しくやりましょう。ああ、ナカダ主任、改めて乾杯の音頭頼むわ」
「ええ、では…」
ここから会合は一転、懇親会モードに入り、和やかな談笑の場となった。
「…風間君、さあ、今日は精をつけて。明日のプレゼンは期待してるから。…もどったライン入れる。いい?」
中原アキはトシヤの座っている席の後ろから、ビールを注ぎ足しながら、後段は彼の耳元に顔を近づけて小声でだった。
アキの意図するところを瞬時に悟ったトシヤは、”はい…”と目で会釈したてから、彼女の唇に視線を移して言葉を発した。
「ああ、すいません。課長…、”今日の”はレジェンヌですよね?」
「あら、わかった?」
「ええ。何しろ試供品を渡された日、家で僕も唇に塗って、それで、鏡と2時間睨めっこしてましたからね。なので、この光沢加減が目に焼き付いているんで…」
「そう…!風間君のレジェンヌ戦略は、そこまでこのリップと向き合ってくれた上でってことね」
レジェンヌ生みの親である女課長は、思わずうれしそうな表情を浮かべたが、すぐに抑えを利かせ、すかさず皆に聞こえるような声で、”明日”を念頭に置いた伏線を張った。
そして、この場の男性職員5人は、我が女上司の発信を”正確”に受け取っていたようだった…。
***
そんな様子を見て取った若き女課長は間髪入れず、さらに次の一手を打った。
「なら、ちょっと塗り直してこようかしら」
すると…、若い女性職員が即反応した。
「えー?じゃあ、課長、私も塗ってもらっていいですか?」
「わー、私も…」
「それなら、一緒に化粧室でお色直ししましょうか」
二人はバッグを手にして席から立ち上がった。
そろって化粧室に向かう女性陣3人のうち、一般職のB子が「じゃあ、行ってきま~す」と手を振ると、男性陣は皆拍手で見送っている…。
”相変わらず中原課長は機転が利くよ。オレのフリを120%活かしてくれた。おそらくレジェンヌを唇に当てた3人がこの場に戻れば、男どもは皆新商品候補のリップに対して私見を口にするだろう…。その一言一言が明日オレがプレゼンする際のブリッジ作用になるはずだ…”
案の定、3人が宴席に戻った後は、試作リップの寸評会の様相を呈することなる。
そして、その最中を割いて、中原アキと風間トシヤはラインを交わし合うのだった…。
「…いいえ、やはり選択のリミットは迫ってますから、今回は明日のミーティングで風間案の可否をもって、本社予算枠を要求してのレジェンヌ積極マーケティング戦略を取るかどうかを決しましょう。ただし、今日この場で皆によって、レジェンヌを二課の命運をかけての勝負どころと捉える方針で一致したわ。それなら、多少のリスクを承知でも果敢にチャレンジという姿勢が前提になる。そこをまずは胸に刻んで、風間君のプレゼンと向き合ってください」
「はい…」
「その上で、皆さん判断を出してもらいましょう。…それで、何しろ私もこのレジェンヌには精魂を込めて作り上げたという自負があるので、最終の方針決定は多数決ではなく、私が決めるってこといいかしら?」
「異議なし!」
「賛成です…」
「私も…」
”アハハハ…、中原課長の一本勝ちだ。ヤマダのヤツ、何ともな顔して苦渋っ面だし”
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「じゃあ、この件はこれまでにして、後は楽しくやりましょう。ああ、ナカダ主任、改めて乾杯の音頭頼むわ」
「ええ、では…」
ここから会合は一転、懇親会モードに入り、和やかな談笑の場となった。
「…風間君、さあ、今日は精をつけて。明日のプレゼンは期待してるから。…もどったライン入れる。いい?」
中原アキはトシヤの座っている席の後ろから、ビールを注ぎ足しながら、後段は彼の耳元に顔を近づけて小声でだった。
アキの意図するところを瞬時に悟ったトシヤは、”はい…”と目で会釈したてから、彼女の唇に視線を移して言葉を発した。
「ああ、すいません。課長…、”今日の”はレジェンヌですよね?」
「あら、わかった?」
「ええ。何しろ試供品を渡された日、家で僕も唇に塗って、それで、鏡と2時間睨めっこしてましたからね。なので、この光沢加減が目に焼き付いているんで…」
「そう…!風間君のレジェンヌ戦略は、そこまでこのリップと向き合ってくれた上でってことね」
レジェンヌ生みの親である女課長は、思わずうれしそうな表情を浮かべたが、すぐに抑えを利かせ、すかさず皆に聞こえるような声で、”明日”を念頭に置いた伏線を張った。
そして、この場の男性職員5人は、我が女上司の発信を”正確”に受け取っていたようだった…。
***
そんな様子を見て取った若き女課長は間髪入れず、さらに次の一手を打った。
「なら、ちょっと塗り直してこようかしら」
すると…、若い女性職員が即反応した。
「えー?じゃあ、課長、私も塗ってもらっていいですか?」
「わー、私も…」
「それなら、一緒に化粧室でお色直ししましょうか」
二人はバッグを手にして席から立ち上がった。
そろって化粧室に向かう女性陣3人のうち、一般職のB子が「じゃあ、行ってきま~す」と手を振ると、男性陣は皆拍手で見送っている…。
”相変わらず中原課長は機転が利くよ。オレのフリを120%活かしてくれた。おそらくレジェンヌを唇に当てた3人がこの場に戻れば、男どもは皆新商品候補のリップに対して私見を口にするだろう…。その一言一言が明日オレがプレゼンする際のブリッジ作用になるはずだ…”
案の定、3人が宴席に戻った後は、試作リップの寸評会の様相を呈することなる。
そして、その最中を割いて、中原アキと風間トシヤはラインを交わし合うのだった…。