ハードリップ/オンナ上司はタラコ唇~♥
彼女の唇
「いやあ…、これはサイコーだ!素晴らしい…」
「やだあ~、恥ずかしいわ。そんなに食い入るように見て…」
”即興カメラマン”のトシヤがスマホ画面に目を落としながら、何ともな褒め口上を呟くと、年上の女上司は思わず顔を赤らめた。
「今送信しました。どうです?自分でも見ほれるくらい、ステキな唇でしょう?」
「ああ…、でも、何て言っていいのか…」
アキは照れくさくて言葉がスムーズに出なかった。
だが、手元のスマホに移った目の前のレジェンヌを塗ったマイ唇には、食い入るような視線を落としていた。
「いやらしい言い方かもしれないが、レジェンヌ売りこみには、男性視線からの”惚れ惚れ”を独占ってアンダーコンセプトを含有させたいんです」
「ふふふ‥、まあ、殿方”需要”視点からしたら、そこは”王道”のような気がするけど…」
”うーん、さらっと流してくれるじゃん。そんなら、ここはひとカマだ…”
「イメージとしては、横たわっていたキャップ付きレジェンヌのリップを”起てる”。…キャップを外す。そしてむき出しになった微妙な肌感覚色の数センチ突起が素直に上空を向く…。そんなビジュアルが脳裏で然るべきモノの状態とコラージュです。そこまでイメージを馳せらせれば、従来の”王道”越えではないかと…」
「まあ!」
***
「課長…。へへへ…、”ココ”は今回の風間案からは外してありますからとりあえずご安心を。でも、そんな潜在イメージの誘い香もさらりとテイストって主旨はご理解いただけますか?」
「あくまで抽象的な広義でってことでなら…。そこは可としましょう」
”うわー、大したタマだわ、この女上司…。よし、本題に戻るか…”
「で、ですね…、要は、”このショットポーズ”をメインビジュアルにハメたいんです」
「風間君…、その狙いとコンセプト、聞かせてもらうわ」
「はい…。このレジェンヌは課長が企画段階から、ピンクと肌色と薄オレンジを帯びた淡い色彩、そこにほのかな柑橘系の匂いのマッチングをモチーフにして、さらに目に訴えるテカり感という濃厚テイストも添える、従来にないフュージョニックなアピールを内包した変身ツールのリップってのがベースでしたよね?」
「ええ。その通りよ…。それで…?」
ここに来て、二人の問答は弾けるリズム感を発するかのようだった。
***
「僕…、自分の唇に塗って、自我撮りした画像を拡大やトリミングしたりして、多角度でそのビジュアルがどう”受け手”に発するか、いろいろ考えてみたんです。その結果、このリップが映える唇の素材は”厚手”だろうと…」
「風間君!それって、いわゆるタラコ唇の女性ってこと?」
「そうです!今、課長の”レジェンヌ後”の唇をまざまざと見させてもらって、確信できました。このリップの先行マーケティングでは、思い切って、”厚手”の女性をアピールターゲットに据えてしてみたらと。これ…、それなりのウェーブを望めるんじゃないかって…」
「…」
アキは衝撃を受けた。
そして彼女自身、明らかにタラコ唇だったのだ…。
***
”こんな視点があったのか…!試供品段階での市場戦略なら、まずは商品とベストマッチングの消費者需要を得ることが、会社サイドへは手堅い説得材料となる。それならば…、風間の戦略切り口は極めて有望だわ”
「風間君!あなたのレジェンヌ観には目から鱗が落ちたわ。…行きましょう、コレで…」
「ええ…。課長の勝負を懸けた渾身の息が吹き込まれたレジェンヌは、絶対ヒット商品にできます!」
彼はその間もずっと、両目はスマホに釘付けだった。
”風間君…、あなた…”
「…オレはたった今気づきましたよ。レジェンヌとあなたを重ねていた。”コレ”を自分に塗った時、正直、興奮したんです。それは単に男が口紅を塗ってるってことだと思っていたけど、どうやら違った。なんて、色っぽいんだ…。あなたの唇を塗ったレジェンヌは…」
「私としては逆に言って欲しいけど…」
「ふふっ…、なんか、課長とはいろんな意味でツーカーな意思疎通ができるようですね。早速訂正します。レジェンヌを塗った中原アキという魅力的な女性の唇は言いようなく色っぽい。もう我慢できないや…」
ここでトシヤはスマホの画面に顔を近づけると…、なんと、そのままスマホのアキのキスをした…。
「!!!」
トシヤは静かに顔を上げ、その目をじっとアキに向けた。
「…目の前の女性が直接の上司じゃなかったら、今夜は躊躇なくあなたを口説いていますよ」
「あなたは自分に正直ね。私も意地は張るけど、自分の気持ちには正直になりたい…。今夜…、今目の前にいるあなたには躊躇しないでもらってもいいわ。その先は、私の気持ち次第だけど…」
二人はしばらく無言で見つめ合っていた。
「いやあ…、これはサイコーだ!素晴らしい…」
「やだあ~、恥ずかしいわ。そんなに食い入るように見て…」
”即興カメラマン”のトシヤがスマホ画面に目を落としながら、何ともな褒め口上を呟くと、年上の女上司は思わず顔を赤らめた。
「今送信しました。どうです?自分でも見ほれるくらい、ステキな唇でしょう?」
「ああ…、でも、何て言っていいのか…」
アキは照れくさくて言葉がスムーズに出なかった。
だが、手元のスマホに移った目の前のレジェンヌを塗ったマイ唇には、食い入るような視線を落としていた。
「いやらしい言い方かもしれないが、レジェンヌ売りこみには、男性視線からの”惚れ惚れ”を独占ってアンダーコンセプトを含有させたいんです」
「ふふふ‥、まあ、殿方”需要”視点からしたら、そこは”王道”のような気がするけど…」
”うーん、さらっと流してくれるじゃん。そんなら、ここはひとカマだ…”
「イメージとしては、横たわっていたキャップ付きレジェンヌのリップを”起てる”。…キャップを外す。そしてむき出しになった微妙な肌感覚色の数センチ突起が素直に上空を向く…。そんなビジュアルが脳裏で然るべきモノの状態とコラージュです。そこまでイメージを馳せらせれば、従来の”王道”越えではないかと…」
「まあ!」
***
「課長…。へへへ…、”ココ”は今回の風間案からは外してありますからとりあえずご安心を。でも、そんな潜在イメージの誘い香もさらりとテイストって主旨はご理解いただけますか?」
「あくまで抽象的な広義でってことでなら…。そこは可としましょう」
”うわー、大したタマだわ、この女上司…。よし、本題に戻るか…”
「で、ですね…、要は、”このショットポーズ”をメインビジュアルにハメたいんです」
「風間君…、その狙いとコンセプト、聞かせてもらうわ」
「はい…。このレジェンヌは課長が企画段階から、ピンクと肌色と薄オレンジを帯びた淡い色彩、そこにほのかな柑橘系の匂いのマッチングをモチーフにして、さらに目に訴えるテカり感という濃厚テイストも添える、従来にないフュージョニックなアピールを内包した変身ツールのリップってのがベースでしたよね?」
「ええ。その通りよ…。それで…?」
ここに来て、二人の問答は弾けるリズム感を発するかのようだった。
***
「僕…、自分の唇に塗って、自我撮りした画像を拡大やトリミングしたりして、多角度でそのビジュアルがどう”受け手”に発するか、いろいろ考えてみたんです。その結果、このリップが映える唇の素材は”厚手”だろうと…」
「風間君!それって、いわゆるタラコ唇の女性ってこと?」
「そうです!今、課長の”レジェンヌ後”の唇をまざまざと見させてもらって、確信できました。このリップの先行マーケティングでは、思い切って、”厚手”の女性をアピールターゲットに据えてしてみたらと。これ…、それなりのウェーブを望めるんじゃないかって…」
「…」
アキは衝撃を受けた。
そして彼女自身、明らかにタラコ唇だったのだ…。
***
”こんな視点があったのか…!試供品段階での市場戦略なら、まずは商品とベストマッチングの消費者需要を得ることが、会社サイドへは手堅い説得材料となる。それならば…、風間の戦略切り口は極めて有望だわ”
「風間君!あなたのレジェンヌ観には目から鱗が落ちたわ。…行きましょう、コレで…」
「ええ…。課長の勝負を懸けた渾身の息が吹き込まれたレジェンヌは、絶対ヒット商品にできます!」
彼はその間もずっと、両目はスマホに釘付けだった。
”風間君…、あなた…”
「…オレはたった今気づきましたよ。レジェンヌとあなたを重ねていた。”コレ”を自分に塗った時、正直、興奮したんです。それは単に男が口紅を塗ってるってことだと思っていたけど、どうやら違った。なんて、色っぽいんだ…。あなたの唇を塗ったレジェンヌは…」
「私としては逆に言って欲しいけど…」
「ふふっ…、なんか、課長とはいろんな意味でツーカーな意思疎通ができるようですね。早速訂正します。レジェンヌを塗った中原アキという魅力的な女性の唇は言いようなく色っぽい。もう我慢できないや…」
ここでトシヤはスマホの画面に顔を近づけると…、なんと、そのままスマホのアキのキスをした…。
「!!!」
トシヤは静かに顔を上げ、その目をじっとアキに向けた。
「…目の前の女性が直接の上司じゃなかったら、今夜は躊躇なくあなたを口説いていますよ」
「あなたは自分に正直ね。私も意地は張るけど、自分の気持ちには正直になりたい…。今夜…、今目の前にいるあなたには躊躇しないでもらってもいいわ。その先は、私の気持ち次第だけど…」
二人はしばらく無言で見つめ合っていた。