おじさんフラグが二本立ちました
ーーーーー翌日
気分転換にスーツに着替えて電車に乗った
中央駅を降りて迷いなく裏口へと出る
表口から大通り沿いを歩けば聖愛への通学路でもあるし父の会社への一本道でもある
でも・・・それを避けて
一本北側を並行する裏通りを選んだのは大通りに面したデパートの東側に彬の会社があるからだった
・・・なんだか負けた気がするけれど
今はまだ顔を合わせる気分じゃないだけ
実は城山公園への誘導路としても有効な裏道は
地価の安さもあってか小規模店舗が犇く魅惑的な通りで
更には両側に歩道のある一方通行だから街ぶらにはもってこいなのだ
ただ、聖愛学園の生徒は一般人の通行の妨げになるのを避けるために
特別な用がない限りは大通りが通学路に指定されている
観光客に紛れて歩いていると背後から声を掛けられた
「久しぶり、あれから身体の具合はどお?」
振り返った先に見えたチャラ男に一瞬無視してやろうかと思ったけれど
何が楽しいのかニコニコしながら着いて来る様子に気が変わった
「あなたの顔を見なければ絶好調だったのに」
「それは申し訳ないっ」
頭を掻き掻き謝る様子を見ながら
いつの間にか話の面白さに笑っていた
「なんで気付いたの?」
「俺が可愛い子を見逃すはずないでしょ」
とんだ軽いチャラ男だ
「ここで何してるの?」
スーツは着ているけれど平日に裏通りを手ぶらで歩く私に興味津々らしい
「父の会社へ行こうかと思って」
「確か、S女《えすじょ》の三年生だったよね」
「そうだけど」
「それなのにお父さんの会社?」
「そう、この先なの」
「良かったら、聞いても良い?」
チャラ男に伝えたところで
問題は・・・ないだろう
「NEXTOP」
「・・・それって、レガーメの?」
「なによ、食いつくじゃない」
「俺の店、抽選会に参加してて」
「へぇ」
「いや、もっと興味持って欲しいな」
「断るわ」
「もしも時間があるなら
お茶に誘いたいんだけど」
面倒事に巻き込まれるくらいなら
父の会社を教えなければ良かった
だから・・・
「茶渋がつくわよ」
嫌味も言いたくなる
「・・・っ、問題ないよ」
「あなたとお茶とか不味そうなんだけど」
「手厳しいよな」
「お茶だけって約束できる?」
「もちろん」