おじさんフラグが二本立ちました
「みよちゃんと付き合ってるのに
浮気するなんて最低だよ」
沈黙を破った加寿ちゃんの声に
彬は深くため息を吐いた
「誓って浮気じゃない
クラブの売り上げの為に
俺を利用しているだけの女だろ」
「そんな風には見えなかった
やっぱり彬とは付き合えない」
「仕事の延長だったんだ、でも
みよが嫌なら、これからはやめる」
そこまで言われてしまえば
強くも言えなくなる
「俺がみよのことを好きで、誰よりも一番に思っている
念願のみよと付き合えたんだ、これからはやめる」
強く断言されると、それを躱せなくなって
その表情を読んだように加寿ちゃんが口を開いた
「みよちゃん、良いんじゃないかな
おじさんはみよちゃんのことを誰よりも好きみたいだから
あと三週間付き合ってみたら?」
加寿ちゃんが言うことも理解はできる
ただ、折り合いのつかない気持ちは口にすることにした
「謝って」
「あぁ」
「だから、謝ってよ」
「悪かった。もうしない」
「浮気をしたら終わりって約束だったけど
続けるならそれなりの代償は当然よね?」
「たとえば?」
「浮気の代償は浮気」
「それはダメだ!男と女は違う」
「違わないわよ」
「勘弁してくれ」
「だったら、私のことが一番って信じさせて
浮気は論外だから。それで良い?」
「わかった約束する」
「じゃあ私達は帰るから」
バッグを持って立ちあがろうとするのに、スッカリ馴染んだ加寿ちゃんは
「折角だからお寿司が食べたい」
と言い出した
「え、帰ろうよ、加寿ちゃん」
焦る私を見ながら微笑んだ彬は
狛犬を呼んでお寿司を注文した
「お待たせしました」
回らない豪華なお寿司がテーブルに並べられると
現金な胃袋は白旗をあげた
更には、頼んだ割にお寿司をそっちのけで狛犬に話しかける加寿ちゃんは、一人楽しそうで
それを見た彬は
「こいつが気になる?」
狛犬のひとりを指差した
「はい。すごくタイプ」
迷わず答えた加寿ちゃんは惚れやすいという悪い虫が顔を出していた
それを好機と捉えたのか、加寿ちゃんの隣に座った狛犬は楽しそうにお喋りを始めた
「何か企んでるよね?」
「ひと聞きが悪いな」
笑って否定したくせに
「家に遊びに来ないか?」
食べ終わるタイミングで加寿ちゃんを誘うあたり
大人は抜け目がないんだと思った