おじさんフラグが二本立ちました
リビングへ戻るとまだ加寿ちゃんは着いていないようだった
「紅茶を用意しますね」
ばあやがいれてくれたダージリンは香りが良くて
飲んでいるうちに加寿ちゃんと竹田さんが到着した
「すごいマンションだね~」
興奮したようすの加寿ちゃんは
ソファの向かい側に座ると
「あたし彼氏と別れてきたよ」
驚きのひと言を放った
「・・・え」
別れると言いながら中々首を縦に振らない彼氏との付き合いは
加寿ちゃんにとっての呪縛だった
それをいとも簡単に?
そんな私の頭の中を読むように
「納得させる為にこの人にお願いしたの」
加寿ちゃんはそう言うと隣に座る竹田さんを見上げた
「・・・へぇ」
思いもつかなかった展開に感心するしかない私の隣で
「彼氏と別れる為に竹田を使うとは
考えたもんだな」
彬も同じ反応を示していた
「そうなんです
嫌な彼氏だったから助かりました」
「それから」
フフフと笑った加寿ちゃんの話には続きがあるようで
視線を集めた加寿ちゃんは竹田さんを再度見上げると
「私と付き合ってください」
綺麗に笑って右手を差し出した
「「・・・!!」」
突然の告白に止めようとした私より先に
「付き合うよ」
その手を取ったのは竹田さんだった
「ありがとう、よろしくね」
「・・・え」
混乱する頭が追いつかない私と、嬉しそうに携帯電話を取り出して番号交換する加寿ちゃん
彬との残り三週間を思うだけで
頭を抱えたくなった
そこからの加寿ちゃんは竹田さんを質問攻めにして
彬の家の中に竹田さんの部屋があると分かった瞬間
「部屋を見てみたい」と強請り始め
結局、彬と二人でリビングルームに残された
「早く帰りたいのに」
溢れた本心は彬に届いたかどうか
「みよ」と呼ばれて顔を上げた瞬間
顎を引き上げられて唇が重なった
恋人と呼ぶには気持ちが追いつかないけれど
キス魔の彬の所為で慣れてきた自分にため息
「卒業したら、結婚しようか」
「・・・嫌」
「・・・クッ、即答なのな」
「大学へ進学するし」
「学生結婚だよ」
「やりたいことが沢山あるの
色んな人と出会いたいし遊びたい
第一結婚したい程好きじゃない」
「一筋縄ではいかないな、みよは」
笑って頭を撫でてくれた彬はソファをポンポンと叩くと話を変えた
「さっきのクマをここに座らせようか」
「・・・そう、だね」
激しく言い合ったり険悪な雰囲気になったり
彬との付き合いは同級生と付き合っているような感覚になる
手を繋いで寝室まで戻ると床に座らせてたはずのクマがベッドいた
「重い」
クマを持ち上げようとしたけれど
余りの重さに振り返ろうとした瞬間
背後から抱きしめられた
「やめて、持てないじゃん」
「クマは俺が運ぶよ」
重くて動かなかったクマを片手で掴んだ彬はベッドの下へ置くと
私を抱きしめたままベッドへと崩れ落ちた
「・・・っ」
噛み付くような口付けに翻弄されるうち
制服の裾から手が滑り込んでいたことに気付かなかった
「・・・ゃ、だ、めっ」
気持ちが不確かなまま身体を重ねるのは初めてなのに
その不安ごと解すような行為に溺れていく
「みよ、綺麗だ」
「・・・ぁぁあっ・・・んっ」
。
「身体大丈夫か?」
「・・・なんとか」
受け止めるだけの不揃いな繋がりに
心と身体は真逆の
宙を彷徨っているようだった