おじさんフラグが二本立ちました
走り始めたと思ったら五分も経たずに車は繁華街で止まった
大通りを歩いて渡っても良かったんじゃないかというレベルの近さにビルを見上げる
迷子を恐れてお姉さんに寄り添って歩く
「私ね。妹が欲しかったの
一緒にお洋服を選んだり、お喋りしたり
女って色々楽しいことが沢山あるでしょ」
それは隣の芝生の話で現実はそうでもないってことは言わない
「私で良ければ。いつでもどうぞ」
大人のコメントも出せるようになった
「嬉しいこと言ってくれるのね
彬にお礼言わなきゃ」
「フフ」
エレベーターを降りると黒いタイル貼りの通路を歩く
お姉さんと私のヒールの音だけが響く中
店の入り口に近づくと中から扉が開き、イケメンの黒服がお姉さんの前で跪くと手にキスを落とした
「皆様お待ちかねです」
黒で統一された店内の奥まった場所にある個室に通された
「遅いじゃない」
「待ってたよ~」
「はじめまして」
「サァ座って」
矢継ぎ早に言葉が飛び交うなか
お姉さんは振り返ると私に向けて手を出した
「今日のお姫様、みよちゃんよ」
お姉さんに手を引かれて入った部屋には
男女が交互に座ってテーブルを囲んでいる
その全員の視線を一瞬で集めてしまった
「はじめまして山下みよです」
綺麗な笑顔を作って挨拶をすると
大きな拍手で迎えられた
「めちゃくちゃ可愛い」
「天使が来たかと思った」
「愛実、どこで知り合ったの」
お姉さんからは離れた席を指定され腰を下ろす
隣はサラサラの髪の人に日焼けした肌の体育会系の人
真逆のタイプに挟まれたところで
飲み物が運び込まれ、お姉さんが乾杯で立ち上がった
「「「乾杯」」」
「「「かんぱ〜い」」」
簡単な自己紹介は、まるでお見合いパーティーのようなテンプレ
もちろん私を除く全員が予想通りの年齢だった
タイミングよく運ばれてくる料理に集中したいのに
延々と話し掛けてくる両隣に飽きてきた
お医者さんなのは聞かされていたけれど
個人病院の息子とか大学病院とか
私の通う歯科の担当医まで居て
なんだか落ち着かない
右隣のサラサラ髪の前田さんは大学病院の内科医だそうだ