おじさんフラグが二本立ちました


病院に戻ると院長も一緒に降りた


「病室まで送るよ
彬も診ておきたいからね」


「ありがとう、キャ」


ヒールがぐらついてバランスを崩した私をさり気なく支えてくれた院長は

「危ないからね」と、そのまま腰に手を回した


エスコートされるのを不思議と嫌だとは思わなくて

そのまま病室まで着いてしまった

院長が扉をスライドさせると
ケバい盛り髪の女がソファに座っていた


「・・・っ」
「・・・へぇ」


「ん?お見舞い?彬さんね~
シャワー浴びてるの。待つ?」


どう答えようかと院長を見上げると「乗っかろう」と含み笑いをした

乗っかる以前の問題で
私の視線は女の手元にあった


「君は?」


「あたしぃ?彬さんのカノジョ」


「へぇ」
感心したフリの院長は私の顔を見た途端
「ちょっと待っててね」と一度スライド扉を閉めた


「みよちゃん、ごめんね
俺が乗っかろうなんて言ったから」


「あの子が使ってるの、みよのブランケットと本だよ
こんなに振り回されるなら付き添いなんかやめる」


「ごめん、みよちゃん」
そう言うと院長はもう一度扉を開けて


「出直すことにするよ
彬にお大事にって伝えて」


「うん分かった、名前は?」


「進って言えば分かる」


「分かった、ススムさんって伝えるね〜」


・・・ムカつく


「許さない
ブランケットも本も捨てる
それに彬も、もう要らない」


駐車場に着いて車に乗り込んだところで携帯電話が鳴り始めた


【彬】


「出ないの?」


「出たくない」


「じゃあ俺が出ようか?」


・・・それは違う気がする


通話をタップして耳に当てると
少し焦った彬の声がした

(みよっ!今どこだ)

「病院の駐車場」

(病室に戻って来てたんだろ?)

「彬の彼女が居たから邪魔しちゃ悪いと思って
お見舞いはまた今度にするね」

(みよ誤解だ。説明させてくれよ
彼女はみよだろ?どうしてそう言わないんだよ
戻って来て俺の話を聞いてくれ)


「みよの物を勝手に使ってたのよ!
許さないんだからっ」


興奮し過ぎて大きな声を出した私に
彬が(ごめん)と謝って電話が切れた


直後に院長の携帯電話が鳴り始めた

院長は私をチラッと見たあと車から降りて電話に出た

何を話しているか声も聞こえないけれど

今は何を聞いたとしても
苛立ちが収まるとは思えなかった







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