おじさんフラグが二本立ちました
「今夜はどっちに帰る?」
「・・・どっち?」
「うちに泊まっても良いよ」
「もぉ、冗談ばっかり」
「「フハハ」」
吹き出したところで院長の携帯電話が鳴り始めた
「もしもし。ここにいるよ
今・・・俺の部屋だよ」
話しながら院長が携帯電話を指差す
バッグの中から携帯電話を取り出すと電源が落ちていた
「・・・あぁ。ちょっとまって
はい、みよちゃん出て」
渡された院長の携帯電話を耳に当てる
(みよ)
「ん?」
(そこに居たら。進に喰われるぞ)
「なによそれ」
携帯電話を院長に返す
「ここに居たら進さんに喰われるって」
「おいおい人聞きが悪いぞ彬
あぁ。分かった。じゃあな」
通話を終えた携帯電話をポケットに入れた院長は頭を撫でながら
「話を聞いて欲しいから
連れて来て欲しいって」
彬からの伝言と
「もしかダメなら迎えに行くから
夜中でもいつでも連絡しておいで」
逃げ道も作ってくれた
。
病室まで送ってもらって扉を開けると
ベッドに座った彬とソファに狛犬がいた
「みよ」
ベッドから降りてきた彼にギュッと抱きしめられる
「ごめん・・・みよごめん」
「じゃあ。俺は帰るから」
院長に「ありがとう」と伝えたかったけれど
彬に腕の中からは出して貰えなかった
「お姫様ご機嫌直して」
「・・・馬鹿にしてんの?」
途端に嫌味が口から出る
「違うよ。本も新しいのを買ったし
ブランケットも新しくした」
狛犬がリボンの付いた包みを持っていた
私が怒ったから同じ本とブランケットを買いに行かせたのだろう
他人を巻き込んだ以上
向き合うしかない
「ゆっくり話そう」
「・・・いいよ」
「良かった」
私が頷いたところで松本さんが立ち上がった
「若、もう帰ります」
「松本さんありがとう」
この時間に同じ本を探すのは大変だっただろう
「いいえ。では、おやすみなさい」
松本さんは一礼すると帰って行った
二人でソファに座ると
ブランケットを膝にかけられた
「さっきの子いつ帰ったの?」
「話を聞いてすぐ帰らせた」
「どこの誰?今回の入院はまだ知られてないんじゃないの?」
「玲奈の店の女。
玲奈から聞いたんだろ、店で話したこともないんだぞ」
「そんなこと知らない」
「彼女って言ったのがムカついたのか」
「違うわ。あの子
当然のように私の物を使ってた
彬が触らせたと思ったの」
「俺は知らなかったんだ」
「そんなこと分かんないじゃん」
「俺が悪かった
次から気をつけるから機嫌直して」
「もういいよ」
引き寄せられえ唇を重ねる
啄むようなキスが離れると
「みよの口。良い匂いがする」
「ジャスミン茶かな
先生の家で飲んだの」
「ハーブティか
変なことされなかったか」
「なにそれ、あるわけないじゃん
彬のこと擁護してた院長に失礼だよ」
「そうか。あいつ良い奴だな」
コンコンとノック音がして
看護師長と看護師さんがベッドを組み立てに来てくれた
「みよはシャワーを浴びるか?」
「シャワーしかないの?」
「狭いけど浴槽もあるよ」
「入浴剤持って来たから入るよ」
お湯を出して着替えを用意すると髪をとかした
お気に入りの入浴剤を入れると炭酸ガスと良い香りが広がる
脚を伸ばして浸かると
長い一日の疲れがお湯に溶け出すように思えた