おじさんフラグが二本立ちました


朝食を済ませて病室に戻ると
ばあやと狛犬が来ていた


「みよさんおはようございます」


「ばあや来てくれたのね」


「遅くなりました
今日は私が付き添いますから
みよさんは休んでくださいね」


「ありがとう」


彬を見ると既に渋い顔をしていて
ベッドに近づくと手を引かれて抱きしめられた


「遅いぞ」


「近くのコーヒー屋さんが休みで別の店だったの」


面倒だと思ったタイミングで携帯電話が鳴った


「お姉さんだ・・・もしもし、はい」


お姉さんの話は
お父さんが取引先に入院を知らせたことで見舞い客が来るだろうとのことだった


「親父も勝手なことして」


「一般のお見舞いは午後からだよね」


「そうですね」
狛犬が入院のしおりを見てくれた


「午後は出かけていいかな」


「紹介するんだから居てほしい」


「紹介なんてしなくていいよ」


こういうところが嫌だと思うのに
譲らない態度を見ただけで
面倒だという気持ちを飲み込んだ


「じゃあ、それまでちょっと出掛けてくる」


「なにか用事か」


「彬もうすぐ退院でしょ
院長に食事のお礼を買いに行きたいの」


「お礼なんて良いだろ」


「毎回ご馳走になってるんだもん
ちゃんとお礼しなきゃ失礼でしょ」


少し語気を強くすると
渋々承諾してくれた


これじゃあどっちが子供か分からない


デパートの開店時間に合わせて
狛犬と一緒に出掛けた

監視付きのお買い物にも開き直るしかない
ハーブティのショップで三種類選ぶと
可愛くラッピングしてもらった


午後からは見舞い客が訪れた

それは夕方近くまで途切れることなく続き

あっという間に病室がお見舞いの花でいっぱいになった

その間ばあやは忙しなく動き
私が受け取ったお花やお見舞い金を振り分けてくれた

私一人では到底務まらなかっただろう


「みよ疲れただろ」


「うん。彬も疲れたでしょ
少し眠ったら?」


布団を掛けてやる


「ばあやナースステーションに行って
これ以降の見舞い客を断ってくれる?」


「お願いしてきます」


「みよは気が利くよな?ありがと」


「どういたしまして」


「彬が寝ている間に院長が来たら
食事行ってくるね。プレゼント渡したいし」


「あぁ許すよ」


疲れたのかこの時ばかりは茶化さなかった

彬はすぐ寝息をたて、ばあやは見舞金を持って狛犬と帰って行った








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