おじさんフラグが二本立ちました
院長が迎えに来てくれると
いつものように二人で出掛けた
「今夜は多分みよちゃん疲れてるはずだと思って
薬膳を予約してみたんだ」
「薬膳?」
「食べたことないんじゃないかな
楽しみにしてて良いよ」
「は〜い」
郊外にある中華料理店
個室に通されて円卓を挟んで座ると
中華のコース料理が運ばれてきた
「薬膳って聞いたから
美味しくないのかと思ったのに
めちゃくちゃ美味しい」
「そうだろ、美味しいけど身体にも優しい。一石二鳥」
デザートのタイミングで
紙袋を取り出した
「進さんこれ・・・」
院長の前に差し出すと、意外にも固まった
「何これ」
「いつもご馳走になってるでしょ
お礼の気持ちなの」
「・・・え」
「少しだけど気に入って貰えるといいな」
「お礼なんて要らないよ
俺は毎日みよちゃんとご飯食べられるのが嬉しかったんだから」
「それはダメだよ
進さんのために選んだハーブティーなの」
「分かったありがとう
・・・すごく嬉しいよ」
「喜んで貰えて私も嬉しい」
「何のハーブティーだろ」
「ブレンドも考えたんだけどね
みよ好みのストレートを三種類にしちゃった」
「じゃあジャスミン茶入ってるね」
「もちろん入ってるよ」
少し下がった眉が泣きそうにも見える院長を見ていると
お礼にハーブティーを選んで良かったと思った
「帰ろうか」
「はい。ご馳走様でした」
先に席を立った院長は私の席まで回って手を差し出してきた
その手に掴まって立ち上がろうとしたら
グイとその手を引かれ腕の中に抱きしめられた
「・・・っ」
「みよちゃんハーブティーありがとう」
「・・・どういたしまして」
「信じないと思うけど
俺、女の子からプレゼント貰ったことないんだ」
「・・・え」
「だから、嬉しくて堪らない」
そんな話を聞いたからか・・・疲れの所為か
彬のことを忘れて
大人しく抱きしめられていた
もちろん、嫌な気がしなかったのが
一番の理由かもしれない
「細いな、みよちゃんは
沢山食べないと大きくなれないよ」
解放されたと思ったら
頭を撫でながら院長は笑う
「大きくなれないって・・・
進さんもおじさんトークじゃん」
「確かに」
そう言うと、笑いが止まらなくなった
「・・・なに、おじさんがツボ?」
「クッ、あぁ」
見上げる私の頭を撫でて目を細める院長は
少しウエーブのかかる髪と大きな目の所為でアイドル並に可愛い
二十代前半でも通る甘い雰囲気は独特で
こんなイケメンに告られたら
誰でも落ちる気がする
「みよちゃん大好き」
「フフ、また揶揄って」
身体は疲れていたはずなのに
院長のお陰で美味しくて楽しい時間だった
病室に戻っても彬はまだ寝ていることに安堵して
二人きりの空間に
大きく息を吐き出した