ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 バーデン帝国との国境までは、馬車で送ってもらった。

 とはいえ、王族の馬車ではない。王族が手配した馬車ですらない。

 王宮で働いている見ず知らずの庭師の従兄が運送業をしているとかで、その馬車に便乗させてもらったのである。

 道中、馭者台で馬を馭している馭者に尋ねてみた。

 バーデン帝国までの運賃はいくらなのか、と。

「タダだ」

 すると、出っ歯の老馭者はぶっきらぼうに答えた。

 彼らが通常運ぶ荷物よりも、わたし自身はずっと小さくて軽い。それに、わたしを迎えに来ているであろうバーデン帝国の受取人たちとの約束の地は、ちょうど通り道らしい。
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