ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 自分自身に対してでも、「おめでとう」の一言も言葉を贈ったことがなかった。

 それなのに、今年は四人に祝ってもらっている。

 こんなこと、ありえることなの?

 現実味がなさすぎて、まだ実感がわいてこない。

 うれしさよりも怖さを感じる。

 いつ夢が覚めてしまうかもしれない。いつ彼らの態度が豹変し、ひどい目にあわされるかもしれない。

 そんなふうに恐怖するのは、わたしの性格がねじ曲がってしまっているからに違いないわ。

義母(はは)上」

 隣のジークがハンカチを差し出してきた。そこで初めて、自分が涙を流していることに気がついた。
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