ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 だから、タダで運べと命令されたとか。

 わたしってば、荷物より価値も存在感もないのね。

 皺だらけで歯の飛び出た老馭者の横顔を見ながら、苦笑せずにはいられない。

 そんな調子なので、老馭者と会話があるはずもない。

 というわけで、あたらしく訪れる場所と新生活について妄想をふくらませる時間は充分ある。

 多くは望まない。生きていけるだけの食糧と眠るところがあればいい。贅沢をいえば、本を読むことが出来てボーッとすることが出来ればいい。
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