ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 自分がまだ子どものときのことを思い出してしまった。

 戦争で負けたとき、敵国の軍隊は横暴のかぎりを尽くした。

 わたしだけが生き残れた。死ぬはずだったのに、助けられた。

 幸運以外のなにものでもない。

 とはいえ、それ以降の人生を考えれば、生き残ったことがほんとうに幸運なのかどうかはわからないけれど。

 それでも、生きてさえいたら何かいいことがあるかもしれない。

 ただ、いまのところそれがないだけ。

 そんなことを考えつつ、荷台から二個のトランクをおろした。
< 21 / 759 >

この作品をシェア

pagetop